《ゴールッ!!新雲学園先取点!!なんと、雨宮太陽一人で得点!さすが、10年に一人の天才と呼ばれる逸材だ!!》

あまりの威力に、呆然とする。ベンチの方では鬼道は太陽を見るなり、どこか考え込んでいる。その後に新雲学園の方のベンチを見てみれば、逢坂もまた厳しい表情で太陽を見ている。自分達の方に点が入ったというのに、何故あんな表情をしているのか。鬼道は視線を再び太陽の方に移した。

「くっ…何てパワーだ」
『すみません…三国先輩…私が通してしまって…』
「気にするな悠那。今の失点は俺の所為でもある。雨宮太陽は強い。あいつを止めるにはお前達の力が必要だ」

その言葉に、DF陣は頷いてみせる。先程は太陽の勢いがあったとはいえ、自分達の力を出せなかった霧野達。今度は簡単には通させやしないと、ポジションに戻っていく。
神童もまた、三国達の様子を見ていたのか、彼も頷き皆に指示を出した。

「…まだ一点だ。取り返すぞ!!」
「「「「おう!/はいっ!」」」」

ピ―――ッ!!

再びホイッスルが鳴り、雷門がボールを所持。剣城から再びボールを貰った倉間が新雲学園の方へ入り込んでいく。だが、試合再開となった所で再び動き出す流砂。倉間の目の前で起こった流砂だが、倉間はギリギリで走るのを止めて、何とか巻き込まれずに済んだ。だが、これでは雷門もへたに動けないだろう。

《雷門の前に砂のフィールドが立ちはだかる!!…それに加えて、新雲学園は雨宮を攻撃に残し、他は全員自陣に戻って準備。万全の構えだ!!》

雷門はパスを回していき、何とか新雲学園からボールを奪われないようにいていたが、浜野から神童へのパスの時、根淵がパスカットしてしまった。

「いっけね…!」
「太陽!」

パスカットした根淵は直ぐに太陽へとパスを回し、太陽もまたボールを貰うとそのままゴールへと向かってくる。
それを見た三国はゴールから皆に向けて指示を出した。

「雨宮を徹底マークだ!」

そこで雷門のDFである狩屋、霧野、悠那が太陽を止めに入る。だがやはり、10年に一人の天才と言うべきか、三人相手に抜く事は出来なくとも簡単にはボールを奪えない。三人相手でも全くプレイに乱れが出ずにボールを保持し続ける太陽はやはりすごいのだろう。

「(この展開は予想していたよ)」

三人が太陽をマークしている間に両サイドから真住と根淵が上がってくるのが分かった。今、太陽意外にマークが付く事が出来るのはDFに居る信助だけ。しかもその二人はチーム得点源である二人。太陽はどちらかにパスを出すだろう。三国は苦し紛れに信助に指示を出した。

「信助は10番をマークだ!!」
「はい!」

信助が根淵のマークに付けば、太陽のパスは真住に行く筈。そして、その読みは当たり、太陽は真住にパスを出した。膝で一度ボールを受け取ると、その場所からシュート。だが、今度は三国、そのボールをキャッチしてみせた。

《止めた!三国、今度はキャッチ!!》

ゴールはずっとフィールドを見渡しやすい。だから三国も指示が出しやすかったし、こうやって止める事も出来た。信助はそんな三国を尊敬するような眼差しで見ていた。
これが、ゴールを守る以外のキーパーである選手の役割である。

「(ディフェンダーをコーチングして守備を立て直すなんて…こういう所も覚えていかなくちゃ!)」

「サッカーには二人の司令塔が居る。攻撃を指揮するゲームメーカー。そして、守備を統率し、チーム全体に指示を出すゴールキーパー。
守備の要だからこそ、キーパーは守護神と呼ばれるんだ」
「…後は、攻撃が機能してくれれば…」

守備の方は段々形にはなってきている。後は攻撃の方が形になって来ないと、こちらはただでさえ一点を取られている。流砂もランダムに来るので戦略は難しいだろう。
鬼道の言葉に春奈は小さく頷いて、こちらもまたどう流砂を攻略していくかを考えた。

「砂を避けりゃ敵が…敵を避けりゃ砂が…どうすりゃいいぜよ?」

ボールを持ってドリブルしていけば、錦の目の前に流れる流砂。流砂が終わるまで仲間にパスしていくも、敵に奪われてしまう。だがしかし、相手からボールを奪い返しても流砂がまた起こり、中々相手陣地に攻め込めずに居た。
倉間が真住と雛乃にマークされた時と同時、倉間の立っていた場所に流砂が起きた。

「うわっ!」

真住と雛乃もさすがに流砂が起きてボールを取る余裕がなかったのか、倉間とボールを流していく。完全に足を取られてしまい、身動きが取れなくなってしまった倉間はそのまま転げてしまう。
だが、ボールは何とか天馬がキープし、そのままドリブルで上がって行った。

「砂に足を取られる……そうか!」

そこで、信助がボールを持っていた天馬の元へと一気に駆け寄り、一緒に上がっていく。どうやら何か思い付いたのか、信助の目は自信に満ち溢れている。そして、天馬へ自分にパスをしてくれと言いだした。

「天馬!こっちだ!」
「信助…」

天馬は信助を見るなり、考えるようにする。だが、自分ではまだあの流砂をどう抜け出すか浮かんでいない。ここはまだ案を思いついた信助を信じてボールを繋げて貰う方が効率だって上がる。天馬は小さく頷いてみせると、信助にパスをだした。
信助はボールを貰うと、直ぐに天馬から離れだし、ドリブルを続ける。
目指すは、流砂の起こっている場所へ。

「足を取られない方法はこれだ!!

…“スカイウォーク”!!」

信助の得意なジャンプを利用してか、空中を飛び跳ねるように流砂を避けている。その姿はまるで空中を散歩しているような軽い足取り。上手く流砂を超えた信助は神童にパスを回した。

「キャプテン!!」

信助はボールを高く上げて神童にパス。これでようやく雷門の攻撃と来て、神童も頭上にあるボールを確認すると、必殺技の体勢に入った。

「“フォルテシモ”!!」

段々と強くなっていく神童のフォルテシモ。その必殺技は真っ直ぐにゴールの方へ飛んでいき、一点を狙う。だが、やはり大会最小失点という肩書きを持っている佐田はそう簡単にゴールを割らせてはくれなかった。彼の背後から漂い始める藍色の靄。それは彼の気迫と共に多量していき、やがて具現化されていく。

「“鉄壁のギガドーン”!!」

具現化されたのは青く輝く鋼鉄の鎧を纏った化身。いつぞやで見た巨神ギガンテスにも似ているが、色や形と比べたら佐田が使っている化身の方がもっと頑丈そうにも見える。
佐田は化身の力を借りて、神童の必殺シュートを見事、止めてみせた。
せっかく攻撃まで安定してきたというのにと、悔しそうに神童が表情を歪ませる中、佐田は止めたボールを太陽へと向かって蹴り上げた。

「太陽!」

かなりのロングパス。だが、それでも太陽の元へとボールは落ちていき、そのまま上がってくる太陽。そんな彼を止めようと、霧野が向かっていくがやはり交わされてしまう。十分に太陽が上がってきた瞬間、彼の背後からまたあの靄が噴出してきた。

「はぁぁあああ!“太陽神アポロ”!!

“サンシャインフォース”!!」

再びフィールドに現れた太陽神。今度は普通にシュートをしないのか、太陽は両手を違う動きに回し、手に集まった光を目の前に集めるなりそれを散らした。次にアポロの四本の拳が炎みたく熱く燃え上がり、頭上に炎の塊を出現させた。それはまるで太陽。かなりの大きさになった炎の塊を太陽が蹴りだした。
これが、アポロの必殺シュート。悠那は狩屋と目を合わせた。

『止めるよ!』
「分かってるって!“ハンターズネット”!!」

先に止めに入ったのは狩屋。彼の爪から造りだされた赤い網は確かに出てきて必殺シュートを止めようとしているが、どうも威力がかなりあったのか、狩屋ごと吹き飛ばされてしまう。それでも、多少の威力を削れるのなら、と次は悠那が前に立った。

『“真空カマイタチ”!!』

高く跳び上がって炎の塊となったボールに向けて風の刃を斬り付ける。だが、悠那の必殺技も化身シュートに歯が立たないのか、刃は消えてしまう。それどころか、悠那の風は炎の威力をもっと引き出してしまったのか、先程よりも燃え上がっていく。効いてない事に目を見開かせていれば、気付けば止まっている足。

『うわあ!』

勢いを増していく炎の塊に圧倒され、悠那の横を通り過ぎていく。風圧でか、悠那もまた狩屋と同じく吹き飛ばされてしまった。残るDFはもう居ない。三国もまた必殺技で対抗しようと、高く跳び上がり、両方の拳を地面に向けて叩き付けた。

「“フェンス・オブ・ガイア”!!」

再び現れた岩壁。炎の塊がそこにぶつかり、一時的にボールの進行を止める。だが、やはり太陽の化身シュートという訳か、直ぐに岩壁を打ち砕き、ゴールの中へと入っていってしまう。
ここで、雷門は二回目となる失点を許してしまった。

《ゴール!!
新雲学園二点目!またしても、決めたのは雨宮太陽!!》

ここで、10年に一人の天才の体は病が蝕んでいった。



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