「やったあ!勝ちました!」
「ああ!皆よくやったぜ!」
「ありがとう。あなた達も一緒に戦ったのよ」

マネージャー達も雷門の勝利に思わず声を上げる。すると、それを聞いていた春奈は改めて彼女達にお礼を告げた。もちろん、何で今自分達はお礼を言われたのか分からなかった葵と水鳥、茜は疑問符を浮かべながら春奈を見る。マネージャーは選手と違ってフィールドに立って戦えない。だけど、陰ながら応援し選手を支えている。
それを分かった上で春奈は彼女達にお礼を言った。

「特に茜さん、今回は大活躍ねっ」
「(雷門魂は、皆の中にしっかりと受け継がれている)」

カメラの機能をよく使い、皆の活躍を収めつつこのフィールドの仕掛けを解く時にはかなりの活躍を見せてくれた。春奈が正直にそう言えば、茜は照れた様子で頬を染め、フィールドで嬉しそうに喜ぶ雷門の選手達を見守った。
そして、その様子を見ていた鬼道もまた雷門の勝利を喜んだ。
天城の悩みもこの試合のおかげで何とか解決した。これで雷門はまた決勝へ向けての一歩を歩んだのだった。

…………
………

試合も雷門の勝利で何とか終わり、選手達はあのスタジアムから出て帰ろうとホーリーライナーの所に居た。ライナーも来ていざ帰ろうとしたが、天城が真帆路と話したいと鬼道に許可を貰っていた。鬼道もまた試合が終わった後なのでそんなに急いでいなかったのか、それを承知した。天城と真帆路、そして幸恵が久しぶりの再会で色々と話す為。鬼道なりに気を使ったのだろう。
ちゃんと和解出来るかどうかはもう、この試合で解決している。ただもう一度、落ち着いて話しをする為に時間を作ったのだ。

そして、天城と真帆路、幸恵が再び再開し彼等は自分達から離れて行った。

『嬉しそうだね、天城先輩』
「うん、やっと落ち着いて話せるもんね」

天城達の背中を見送った後、悠那は傍に居た天馬にそう呟いた。もちろん、彼等の背中を見ていた先輩達や輝もまた同じ気持ち。何も教えられなくても何となくあの試合の時の様子や二人のやり取りを見ていて大体予想は付いていた。だからこそ試合の時も任せられたのだが。

「そうだ!太陽に電話しようよ!」
『勝った事を報告するの?』
「うん!」
『え、じゃあ私がする!』
「ええ!俺がする!」
『私!』
「俺!!」

むう、とお互い一歩も引かない天馬と悠那はお互いに睨み合う。そしてそれを見ていた先輩達は意味が分からないものの、苦笑の表情を浮かべる。
そして、二人は何かを思いついたのか自分達の拳をぎゅっと強く握りしめ、そのまま殴りつけるかのように前に出そうとしていた。

「(まさか、殴り合い!?)天馬!悠那!ダメだって!」
『「じゃーんけーんぽんっ!!」』
「がはっ!」

拳を作ったのを見て信助は殴り合いをするのかと思っていたのか、二人を止めようとしたが案の定と言った所か、二人は平等にじゃんけんで決めようとしていた。そんな二人の様子を見た信助は分かっていたもののどこか気が抜けてしまい、ずっこける。そして、それを見た狩屋は信助の姿を小さく笑った。

『「あいこでしょ!あいこでしょ!あいこでしょ!!」』
「あいこ続き過ぎじゃね?」
「やっぱ似てんだな」
「改めて感じるなこの光景見ると」

じゃんけんをしてからお互いにあいこしか出していない二人の姿を見て浜野、倉間、神童がそう口に出す。確かに似ているし、ここまであいこが続くのもすごい事だろう。
暫く二人のじゃんけんの行く末を見ていれば、どちらかがパーを出し、どちらかがチョキを出した。それを見てやっと別れたかと感じつつその手の経緯を見てみれば、嬉しそうに顔を綻ばせる天馬と落胆する悠那が伺えた。
どうやら、パーは悠那でチョキが天馬だったらしい。

「じゃあ俺ねっ」
『うう…』

何故自分はパーを出し手しまったのかと自分の手を睨みつける悠那。天馬は嬉しそうにポケットから緑色の携帯を取り出し、皆に「ちょっと電話してきますね!」と告げて走り去ってしまった。
取り残された悠那。肩を落として落胆する彼女に、狩屋が近付いた。

「あれだよね、ちょっと似ててもどこか実力の差があったんだよね。運とか」
『(グサッ)』

狩屋の止めが来てしまい、何かが刺さったかのように顔を俯かせた。そして、悠那もまた天馬の方へ向かっていった。それを見た狩屋はつまんなそうに唇を尖らせ頭の後ろで手を組んだ。

「狩屋どんまい」
「え、何で信助君」
「何となく」

…………
………

「勝ったよ!太陽!」
《それじゃあ今度は準決勝か!すごいね!》
「うん!次も頑張るから!」
《期待してるよ。あ、ところで悠那は?居ないの?》
「え?ああ、居るよ?変わる?」
《ぜひぜひ!》
「じゃあちょっと待ってて!」

雷門が勝った事を報告している天馬の傍でしゃがみ込んでいる悠那。若干その姿が拗ねているようにも見えて天馬は苦笑の笑みを浮かべるも、太陽が変わってくれと言ってきたので何とか彼女の機嫌が直りそうだと感じながら彼女の肩をゆすった。

「太陽が変わってだって」
『あ、うん…分かった』

そう声をかければ悠那は唇を尖らせるのを止めて天馬の携帯を受け取る。しゃがんだまま天馬の携帯を耳に当てて「もしもし」と言った途端、受話器越しでクックッと喉を鳴らしながら笑う太陽の声が聞こえた。その笑い声を聞いて悠那は疑問符を浮かばせながらも話しを続けた。

『太陽?』
《ああ、ごめんごめんっ。天馬から悠那が拗ねてるって聞いたから》
『あ…ははは…いや、天馬にじゃんけんに負けた事が悔しくって…』
《はははっ、そんなに俺と話したかった?》
『え?!あ、いや…』

天馬め余計な事を言いおってと口元を抑えながら笑っている天馬を睨みつける。そしてじゃんけんした事を話せばまさかの答えずらい質問が太陽の口から出てきた。正直に言うと話したい思いはあった。だが、そう言ってしまうと色々と誤解されるだろう。

《俺は話したかったよ。天馬とも悠那とも》
『そ、そう…ありがとう』

なんか気恥ずかしいぞ、太陽との電話は。なんて思っていると自分の顔に熱が集中しだすのが嫌でも分かった。

『そ、そういえば私に話したい事があるんじゃないの?』
《え?ないよ?》
『え、じゃあ何で変わってって言ったの?』
《ん?声が聞きたかったからっ》

そこで悠那は携帯から耳を離し天馬の方に押し付けた。それはもう顔を真っ赤にさせながら。いきなり自分の携帯を押し付けられた天馬は驚きながらも自分の携帯を受け取り、呆然としながら悠那の方を見やる。だが、その彼女はもう既に走り去ってしまっており、どうかしたのかも聞けずに天馬は頭の中で数えきれない程の疑問符を浮かばせた。

「どうしたの?ユナ」
《あはは、どうしたんだろうねっ》

仕方なく太陽にどうかしたのかと聞いてみれば分かっている筈なのに意味深な事を言いながら天馬の問いを流す。余計分からなくなってしまった天馬だったが、このまま切るのも太陽に失礼だろうと、天馬は気を取り直して自分の携帯にもう一度耳を当てた。

「えっと、じゃあまたねっ」
《ああ、また。悠那にもよろしくね》
「うん」

と、ここでお互いに電話を切って会話を中断した。病院の電話で話していた太陽は受話器を元の場所に戻した後、笑みを戻して真剣な表情でもう鳴らないであろう電話を見ていた。

「まだまだ、もっと頑張らなきゃ!」

一方、そんな太陽の心境を知らずに電話を切った天馬は、優しく吹いてきた風に目を瞑るが、直ぐに嫌な風じゃない事が分かり、清々しそうな顔でそう一人で呟いた。


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