試合会場となる場所へと一歩踏み出せば、聞こえてきたのは観客の歓声。次に映ったのはチカチカと点滅する光の数。そして、控室やら廊下やらで光っていた蛍光灯のような電気。そこかしこに電流が流れており、フィールドを怪しく照らしていく。陽とは違った眩しさに、思わず目を閉じそうになった。
そんな中、選手達は天井からライトを当てられながら入場していく。この光が眩しくてまた顔を伏せてしまう。
ベンチに着いてもなおまだその光は自分達に降り注いだ。

《期待と興奮に包まれたここピンボールスタジアム。雷門中対幻影学園のホーリーロード準々決勝が始まろうとしている!!》

名前からしてもう嫌な雰囲気が漂っており、悠那は思わず眉間に皺を寄せる。だが、今自分達の目の前に広がるフィールドは一見普通のフィールドに見える。灯り達がこのフィールドを怪しく照らさなかったらの話しだが。
すると、そんな悠那の思考を読み取ったかのようにフィールドの中心が青く鈍く光りだした。そして、その光に続くようにそこかしこから光が帯び始める。黄色やら緑いろやらピンク色やら何かの模様のように現れだし、会場の灯りも明るくなっていった。

『……』

もはや唖然すら出来る。

《両チーム共にここまで勝ち進みこの試合に勝てばベスト4という所までこぎつけました!鬼道監督はこの一戦に前の試合で出場機会のなかった天城をスタメンに起用してきた!》

どういう条件でこの模様が関係してくるのか、今度のスタジアムはどんな事をしてくるのか。フィールドの上に立ったはいいが、自分の今立っている所は黄色く太い線の上。ここは不安要素しかなかった。

「(真帆路。俺達のサッカーをお前にぶつけるド)」
「(フィフスセクターに刃向っても無駄だ。お前には革命なんか出来ない)」

ピィ―――ッ!!

試合開始のホイッスルが鳴り響いた。
ボールは幻影学園からのキックオフ。真帆路は近くを走ってきた銅原にボールを蹴り渡し、自分もまた上がっていく。ボールを受け取った銅原はドリブルをしていき、途中で止めにきた浜野を交わす。

「通すものか!」

だが、それは雷門のキャプテンである神童が止めに入り、ボールをそのまま奪っていく。
奪われた銅原はそこで動きを止めずに神童を追いかける。だが、神童の目の前には幻影学園の選手である不知火影二がこちらに向かってきていた。

「そうはいくかよ!」
「天馬!」
「はいっ!」

止めにきた影二。だが、神童はボールを天馬に渡した。
ボールを受け取った天馬はマークに付かれたもののそのままドリブルをしていく。

「こっちだ!」
「いくよ!」

このままではボールが奪われてしまうかもしれない。剣城は天馬にこちらにボールを寄越せと言わんばかりに声を上げて天馬もまたボールを渡した。
このままいけば天馬が保持していたボールは剣城に渡るだろう。普通のパス。剣城に渡ればまず一点は取れるだろう。雷門の誰もがそんな予想をしていた。
だが――…

キュイィンッ

「「っ!」」

青く光る丸い形をした地面がいきなり上がりだし、バンパーらしき物が天馬が剣城に向けて蹴り上げたボールを弾き返した。パスの為のボールだが勢いはある。そして、それはそのまま自分を蹴った人物の方へと戻るかのようにあの勢いのまま天馬にぶつかっていった。

『天馬っ!』

弾き返されたのはボールだけじゃない。跳ね返ってきたボールを腹から思い切り当たってしまった天馬は地面にバウンドして倒れ込んでしまう。そして、ボールもまた天馬に当たった瞬間またどこかへ弾いてフィールドの外へと出てしまった。
天馬の目の前で平然と立っているバンパー。模様だと思われた物はやはり何か仕掛けがあった。天馬は弾き返された拍子に打ち付けた場所を抑えながら目の前に佇む物を見やる。どうしてこんな物がフィールドにあるのか、と。

「あれは何だド…?」
《出たあ!!これがピンボールスタジアムの特殊機能ジェットバンパーだあ!!》
「パスが弾き返された…」

皆が唖然とそれを見るも、バンパーは自分の役目が終わったのを感じ取ったように再び地面の中へと潜って行く。
これで何故ここの控室といい作りがこんなにカジノみたいになっているのかが分かった。このフィールドはその名の通りピンボール。そして今のはピンボールの玉を邪魔するかのように出てくるバンパーだ。恐らくこの数ある模様はピンボールの玉を弾く物。そして、そのピンボールはサッカーボール。

『今度はカジノ系で試合かあ…』

ならば、自分の今立っている黄色い部分も気を付けなくてはいけなくなる。
今回のフィールドはサイクロンやスノーランドやウォーターワールドとは違う。自由にパスが出来なくなってしまう。確かに今までのフィールドでも上手くパスが回らなかった事があったが、今回のはそういうのとはまた違うのだ。

試合は一旦止まった後、直ぐに始まり再び幻影学園からのスローインとなった。

銅原がボールを持ち、味方にパスを出そうとする。そして、近くに居た子鳩に向けてボールを放り投げた。そのボールを胸で受け止めてドリブルを開始しようとするが、神童がさせまいとボールを奪った。

「(バンパーより高く蹴ればボールは弾かれない筈だ)…倉間!」
「おう!」

何としても一点を取らなければならない。神童は自分の予想で倉間に向けて高くボールを蹴り上げてパスを出した。
神童の予想通り、バンパーは上がってきたがバンパーよりも高く上がったボールは難なく倉間の方へと落ちていく。だが、

「っ!」
「っ、滞空時間が長すぎるのか…!」

高く蹴り上げてバンパーを超すまでは良かったが、ボールが空間に居る時間が長すぎる。倉間が神童からボールを受け取る前に札野がカットしてしまった。

「逃がすかあ!」

札野からボールを奪い返そうと倉間は札野を追う。だが、どういう事かさっきとはまた違う所のバンパーが再び作動し、倉間は避けきれずに真正面から突っ込んで行ってしまい、弾き返されてしまった。
どうやら、あのバンパーはパスだけではなく近付いてきた選手達の邪魔までするようだ。

今回のフィールドは、今までのフィールドよりもややこしく難しいかもしれない。

…………
………



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