皆は練習を一時中断し、吹雪の話を一通り聞く事になった。

「…フィフスセクターのサッカーは間違っていると僕達白恋中も、勝つ事で証明しようとしたんだ。」

だけど、密に白恋中を浸食していて、気付いた時には殆どのメンバーがフィフスセクターに取り込まれていた。そして吹雪は、聖帝に刃向かう反乱分子として白恋中を追放されてしまった。
だけど、白恋中にはまだフィフスセクターに取り込まれていない選手達がいる。彼等と、白恋中を何とかして救いたい。

「お願いだ、雷門中の皆。白恋中をフィフスセクターから解放して欲しい!」

吹雪は説明し終わると共に立ち上がり、皆に頭を下げた。その行動に皆は当然の如く驚いている。それ程自分のチームを救いたいという事だろう。頭を上げた吹雪の表情は真剣そのものだった。

「キミ達の力が必要なんだ。革命の風を起こしているキミ達の力が!」

吹雪のその言葉に何人かが反応した。
自分達の起こしている革命はもはや日本全体、つまり全国の学校中に広まっている。それ程フィフスセクターの存在は偉大で、侵食されていない学校なんて雷門ぐらいだろう。革命を起こしている雷門なら、白恋中をフィフスセクターから救ってくれるかもしれない。吹雪はそんな想いで北海道から遙々ここまで来たんだ。そんな彼の想いを無駄にしたくない。

「俺達、やります。必ず勝って、白恋中を解放します!」

無駄にはしないと、神童が皆を代表して吹雪にそう告げた。

「ありがとう、皆。
だけど…」
「まだ何かあるんだな、吹雪」

神童達の気持ちは嬉しい。だが、また言葉に詰まらしてしまう吹雪。それを見た横目に見た鬼道は再び吹雪に尋ねれば、吹雪もまた素直に頷いた。

「今の雷門では恐らく、白恋中に勝つのは難しい。あの“絶対障壁”を破らない限り…」
「“絶対障壁”…?」

…………
………

一同は部室に戻り、吹雪から白恋中の使う必殺タクティクスの“絶対障壁”についての説明をモニターを見ながら聞いていた。
“絶対障壁”とは、中央に選手を集中的に配置する事で極限までDF力を高めた必殺タクティクスの事。

「テレビで見せて貰ったけど、キミ達の“アルティメットサンダー”も恐らくは通用しない」
「……」
「そんなのにどうやって戦えって言うんですか?」

吹雪の言葉に剣城は悔しそうに顔を歪め、不意に速水も不安な声を出した。それもそうだろう。あんなに苦労して完成させた必殺タクティクスが通じないと来たら動揺せざるを得ない。

「“絶対障壁”を破る為には、より強力な必殺タクティクスが必要なんだ」
「…一つだけ手がある。“絶対障壁”は中央に選手を集めるから必然的に両サイドは手薄になる。ならば、サイドから攻め上げる事が出来れば勝機はある」

どんな強い技も、タクティクスも弱点はある。吹雪ももちろんその事を分かっていたらしく、鬼道の意見に頷いた。

「“絶対障壁”を破る為の必殺タクティクスって事ね!」
「…だが、」
「どうしたんだ?」

今度は鬼道が不安な声を上げた。円堂は部員達と一緒に座りながら鬼道に聞いた。

「“絶対障壁”を振り切る程の俊足と、突破する決定力を兼ね備えた選手が、二人必要なんだ」
「それが破る為の鍵という事か…」
「俊足と決定力…」

神童が吹雪の言う必要な“人物”を選手達の中から探し出す。だが、中々思い当たる人物が見つからない。すると、そんな神童に倉間が口を開いた。

「剣城、天馬、悠那が居るだろ。コイツ等は足も速いし何より化身が使えるじゃないか」

神童が考えていれば、不意に倉間が言った。呼ばれた悠那は目を見開きながら倉間の方を見た。

「あぁ、なるほど!」
「でも倉間、お前はどうすんのよ?」

確かに化身は使えるし、必殺シュートも天馬と悠那は使えるようになっている。FWである倉間がわざわざシュートするのを天馬達に譲る程だ。浜野は腕を頭に回して倉間を意外そうに見ながら尋ねた。すると、倉間はフッと笑った。

「囮になる。DFを中心に引き付ければコイツ等も攻め易くなるだろ」
「倉間先輩…!」
「勘違いすんな、勝つ為にはそれが一番良いと思っただけだ」

三人の実力は認めている。だからこそ、倉間は自分の役割を三人に受け渡して言っているのだ。天馬と悠那は顔を見合わせて笑みを浮かべた。
そして悠那は倉間の方に振り返った。

『私、先輩の為に頑張ります!』
「は?!」

そして、まさかの悠那からの不意打ち。あまりの事に倉間は顔を赤くしながら悠那の方へ顔を向ける。動揺しまくる倉間と比べて悠那の表情は相変わらずキラキラと輝いていた。

『だからもっとデレて下さい!』
「一瞬の感動を返せ」

倉間の言葉にきゃっ、と柄にもなく声を上げれば倉間に「きめぇ」と言われる始末。それでもへこたれない悠那に天馬達や吹雪までもが苦笑の表情を浮かべる。
しばらく笑って見せれば、不意に「あっ」と思い出したように声を上げる悠那。どうかしたのか、と目を向ければ悠那はうーん…と唸っていた。

『でもそれなら京介と天馬の方が良いんじゃないかな』
「え、何で?」
『悔しいけど、二人の方が力あるし…それに、私の化身より二人の方が強いし…』
「…じゃあとりあえず、お前は控えとして出て貰おう」
『分かりました』

…………
………

そして、一同は再び練習へ。今度はサッカー棟の室内グラウンドで練習。だが、練習は先程とは違い、白恋中の必殺タクティクスを破る為のタクティクスを試合までに何とか完成させる為。吹雪の為に、フィフスセクターに勝つ為に、革命の為に。皆はやる気が充分に感じる程の返事をした。

「よし来い!」
「だド!」

「行くぞ」
「!、う、うん!」

ディフェンダー陣もまた気合いが入っている。剣城は天馬に声を掛け、天馬は緊張しながらも返事を返した。

ピ―――ッ!!

春奈の笛の合図で、剣城からのドリブルで始まる。

「止めるぞ!」
「よぉし!」

まずは神童、霧野、一乃の三人がかりで剣城を止めに向かう。剣城はボールを奪われないように上手く一乃の足の隙間を利用し、天馬にパスをする。

「交わせるかな!」
「ボールは貰うよ天馬!」
『手加減しないからね!』

そんな天馬に今度は信助と浜野、悠那が止めに入った。

「わっ!?そんないきなり…!」

だが、あまりにも突然過ぎて上手く三人を交わせない天馬。そんな天馬を左右から挟み込んでフィールドのラインに誘導させるディフェンス。
だが、

ピ―――ッ!!

笛が鳴った。

「ダメでしょ!ラインの外に出ちゃ!」
「「「「あ」」」」

春奈の声に天馬達が自分達の足元を見れば、白いラインを完全に超えていた。これが試合だったら間違いなく相手チームにボールを渡しているであろう。明らかにこれはディフェンスに入った三人が押しすぎた所為だろう。

「は、はい!」
『ごめん天馬…』
「ううん気にしないでよ悠那!」
「もう一度!」

「いや〜、俺も飛び出しちゃったよ〜」
『私もですよ』

天馬から離れて頭を掻く浜野に悠那も苦笑しながら信助と共に戻っていく。

「(思った以上に難しいぞ…この必殺タクティクスは…)

…でも、乗り越えられない壁なんてない!」

中々うまくいかないものの、天馬にもまた大きな火が付いた。

…………
………


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