「新人、松風天馬がフィールドに入りました!久遠監督には一体どんな策があるのか?!」

先輩達の目線は未だに天馬の元にあった。それもその筈、実力も分からない新入生がこのサッカー部を賭けた試合に出すのだ。
別に入ってくるのは構わない。自分達の足を引っ張らないのなら、の話しだが。まあ自分達も人の事は言えない。点数を見れば直ぐに分かる自分達と奴等のレベルの差がそれを物語っている。
それでも足掻くのはやはりこのサッカー部を守りたいからだ。

「またお前か」

怪訝そうに松風を見てうんざりとするように言葉を吐き捨てる。あんなにも痛めつけられたのに、またコイツは逆らおうとする。
ボールを取れたのはきっと偶然だ。コイツのしつこさには拍手をしたいぐらいだ。

「何とかなる…何とかなるさ!!」

ピ―――ッ!!と試合開始のホイッスルが鳴り出したと共に、黒の騎士団からのスローインで始まった。開始早々、ボールは剣城にまたもや渡った。それを見かねて天馬が走り出した。

「俺は、大好きなサッカーを守る!」
「ッチ」

ボールを奪った剣城に向かって天馬は突っ込み、ボールを奪おうとする。が、それをあっさりと舌打ちをしながらも交わし、霧野にボールをぶつけ出した。ぶつけられた霧野は苦しそうにぶつけられた部分を抑えて地面に倒れる。それを悔しそうに顔を歪ませるも諦めずに何度も剣城に向かって行く天馬。何度も何度も剣城に向かって突っ込んでいくが、何度も何度も剣城はそんな天馬を嘲笑うかのように、見せ付けるように天馬では無く、他のメンバー達にボールをぶつけていく。

「サッカーを守るだと?笑わせるな。どうした、お前のサッカーへの愛はそんなものか?」

天馬の周りには剣城にボロボロにされた先輩達が倒れている。全て自分が奪おうとした時に剣城がぶつけた所為。
訳の分からない怒りと悔しさが天馬を襲い出した。

「くっそお!!」

剣城が持っているボールをヘトヘトになりながらも奪いに行くが、やなり簡単に交わされてしまい、天馬は転んでしまった。
と、天馬が転んでしまった所で、前半終了のホイッスルが鳴り出した。前半がこんなに長く感じたのは気のせいだろうか。フィールドを見渡せば、黒の騎士団以外、誰も立ってはいなかった。

『これのどこがフェアなのさ…』

全然フェアじゃないじゃんか…
フェアとは正しい事や公明正大の事を差す。この試合はまるでその言葉の逆。よくもまあこれでイエローカードやレッドカードが出ない事だ。それだけ彼等にはテクニックがあるのだろう。
悠那の言葉に同意するように、足元にあったボールはコロッ…と転がった。
前半戦は10ー0のまま終わってしまった。後半もかなり長く感じるんだろうな、なんて思いながら足元に転がったボールを持ち上げ、踵を返した。

『さてっと、行きますか』

天馬をからかいに

悠那は静かに微笑み、サッカー部員達がベンチに戻ってきたと同時に悠那はグラウンドに通じる階段を降りに行った。

…………
………


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