「ふん、名門の名が廃るぜ。情けねえよなあ」

言い方でのか、言葉の意味でのか、神童は悔しそうに不良君を見た。
浜野と霧野に至っては彼の人間離れした動きに驚くばかりだ。それは観客席で見ていた悠那も同じで、かなり目を見開いていた。

京介…
目を見開きながらも、恐らく自分の知る相手だろう不良君に目を向けた。習得したのにどれだけかかっただろうか。だが、自分の知っている京介がこんな事をしていると思うと絶望的な錘が自分の体に襲って来る。
どうして彼はこんな事をするのだろうか…

止めて欲しい…

悠那の中にはそれだけしか無かった。

「まだ負けた訳じゃない…

…しっかしろお!!」

自分にも皆にも言い聞かせるように大声を上げて言う。だが、今更対策などは無いのだ。
反抗する事も出来ず、一点一点に一人一人が痛めつけるように点が奪われて生き、あっという間に10点差という大差が付けられてしまったのだ。
これではまるで先程のセカンドチームと同じ状況だ。彼等は始めから点数なんてどうでも良かったのだ。人を傷付けられればそれで良い。きっとフェアにやると言った事にもあれは嘘に違いない。

『もう、止めてよ…』

こんな事して何になんのさ…

「このままじゃ雷門が…何とかしないと…」

いつの間にか天馬はその場に居ず、ベンチで座る雷門サッカー部の監督の前に立った。この状態が何とか出来るのは監督しかいない。そう考えたのだろう。確かに監督だったら何とか出来るかもしれないが、0ー10という大差を付けられているのだ。かなり難しい状態だ。

「監督!このままじゃ先輩達が…!何とか出来ないんですか?!」

このままでは本当に潰されてしまう。試合に負ける前に先輩達の体が壊れてしまう。だからこそ何とか出来ないかを監督に聞くが、無表情のままだった。

「監督…!」

必死に訴えかけるような目で監督に言う天馬。だけど監督はそんな天馬とは対照的な態度を見せた。

「何とかするのは監督ではない。選手だ」
「選手…」

監督はベンチから立ち上がり、それ以上何を言うでもなくただフィールドに立っているのがやっとな彼等を見た。
天馬は訳が分からないと首を傾げていれば、ボールがフィールドの外に出てしまったのか、試合が止まった。



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