2010/09/13 19:40 「さようなら」 一人口に出して唱えてみるけれど、やっぱりしっくりこなくてやめた。 片手にはケータイ、もう一方にはいつも笑顔だった幼なじみの写真。 今にも飛び出してきそうな笑顔を浮かべた彼が、もう自分のそばに居ないだなんて信じられないと苦笑する。 こんなことなら、もっと彼に優しくしてやるべきだった、だとか、自分の気持ちをきちんと伝えるべきだった、だとか、実に今更な事ばかり浮かんでは自分を揺さぶって気持ち悪い。 (次会ったときには、必ず、) と、そこまで考えたところではたと気づいた。実に単純明解。 (そっか、こう言えば良いのか) しかし、そんなに簡単な事でさえ浮かばなかった自分はきっと、彼に相当毒されていたのだと思わざるを得ない。 「ね、正臣。」 今はいない、しかし未来にはきっと自分の側で再び微笑んでくれているであろう彼に話しかけた。 「僕らはさ、また、いつか同じ時間を歩めるんだよね。今はただ、分岐点なだけで、ただの障害でしか無いんでしょう?じゃあさ、また二人が一緒に歩いていけるように僕が正臣の居場所を作ったら、君はまた僕の隣に帰ってきてくれるんだよね」 ただただ発されたその言葉は写真の中の彼にさえ届くことなく消え失せる。 だけれども、それで良いのだと帝人は満足げに笑った。だってこれは自分への誓いのような物なのだから。 そして帝人が口から漏らした言葉は、先程よりもぴったりな別れの言葉であった。 「またね。」 (再び出会えるのだもの)(だって僕らはそういう運命でしょう?) よく分からないのがここの通常運転です |