臨正

2010/09/10 07:47

カリカリと室内に響く炭素が紙に触れる音。
それと同時にパサリ、パサリと本をめくる音。
そんな小さな音が響き渡るこの部屋の空気にふぅ、と小さくため息を吐けばこれまた同時に相手もまたため息を漏らした。

「ねぇ正臣くん。何で君はわざわざここに来て勉強するんだい?」

唐突に投げかけられたその問は彼の純粋な疑問。しかし、少年にとってそれはあってはならないことなんだと伝達される。

「それぐらい知っているんでしょう?なんせあんたは情報屋、なんですから。」

情報屋は何でも知っているから情報屋で、知らないことがあってはならないと遠回しに訴える。しかし、彼は一切動じず、それどころか小さく笑みを浮かべると先程まで座っていた椅子からから立ち上がった。
つかつかとソファーに近寄った彼は少年の座る場所の前に立つと線の細い顎を掴む。そしてその整った顔を近づけた。

「俺だって知らないことぐらいあるよ。当然きみが誰にも言っていないことなんて分かるはずがない。だから、こうして君しか知らない事実を聞き出そうとしているんだよ。」

そう言ってにっこり笑う。至近距離で綺麗に笑われてはたまったものではないと少し目を逸らせば可愛い、と言われてしまう。目は逸らせても、顔が赤く染まってしまっているのだがら、仕方ないと言えば仕方ないのだが。

「どうせ、その理由をネタに俺で遊ぶつもりなんだろう、あんたは。」

苦し紛れにキッと睨みつけてやれば笑みはさらに濃くなる。そして静かに首を振ると顎にあった手で頬を優しく擽った。そのくすぐったさに小さく身じろげば、酷く愛おしいものを見るような瞳で見つめられて居たたまれなくなる。

「そんな事しないよ。ただ俺が純粋に君のことを知りたい、ただそれだけさ。」

囁かれたその言葉。続いて合わされた唇に抵抗など全て飲み込まれた。

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