*up data | ナノ


None/ ≫ up data+

余計なお世話

2013/07/13
非王道?
愛されたかった子どもと転入生

考えとかいろいろまとまらないために尻切れトンボである上にいろんな意味で酷いので閲覧にはご注意

そんなだから家族にも捨てられるんだ!!

転入生の言葉に、周りは固まった。転入生の取り巻きは気色悪い笑みを浮かべている。大して動揺もしない僕に違和感を感じたのか、気色悪い笑みはすぐに様子を窺うような表情に変わったものの、どちらにしても気色悪い事には変わりなかった。

「――――――違うんだけどなあ」

少し調べれば本当の事が分かるはずなのに、この子は其れをしない。する方法も、知らない。だから表に提示されている情報に、踊らされてしまう。

「何が違うんだよ!違わないだろ!!」

おまえは家族に捨てられたんだ!

そう言い放つ姿は、見ていて気分が悪くなってくる。第一、大衆の前で大声でいう事でもないだろうに。アレ等とは、確かに血が繋がっていたけれど、所詮それだけの存在。目の前にいるこの存在とも、血の繋がりがあるだけで、所詮、その程度。

極稀に、最中に『あのうるさいガキとは本当に血が繋がっているのか』と『彼』は尋ねてくる。それはそれで悪趣味だと思うことはあるものの、気色悪いとは思わない。その都度『血が繋がってることは知ってるのに変なことを聞いてくるんですね』と応えるだけの話であって。

「君はちゃんと調べた?僕が誰と誰の子供で、双子の弟がいた。とか、ちゃんと、調べられた?と、いうか、君は確か、生き別れになった双子の兄。の、ことを探しにきたって話じゃなかったっけ。違った?」

今は『彼』のことはおいといて、この場をどうにかしなければと思いながらそう尋ねれば、転入生は、狼狽えた。

与えられた情報をすべて信じてしまうのは、馬鹿がすることだと教わらなかったのだろうか。

正確には、捨てたのは僕の方。捨てられたのは、家族の方。其処からして既に、間違っている。転入生は僕のみじめったらしい姿を見たかったんだろうけど、生憎と、元の家族には何も感じない。今の家族が僕のことを要らないと言っていた。そう言われた方が、よほどダメージを受けることは間違いない。

僕は僕を愛して慈しんでくれる存在が欲しかった。だからこそ『彼』の手を取った。

平等の愛を注いでくれない家族なんていらなかった。平等でなくても、少しでも愛してくれてたら、違っていたのかもしれない。別に僕は甘やかしてほしかったわけじゃない。ただ、同じ部屋で、同じように食事して、同じように生活をしたかった。たった、それだけのことだった。

「―――――教えてあげる。僕の元の姓は“萩野宮”で、僕の本当の誕生日は“八月九日”。君と、一緒だね?」

笑いながら言えば、転入生だけではなく周りも驚いている様だった。どうやら『彼』は、その情報を隠していたらしい。いかにも『彼』らしくて、笑えてしまう。悪趣味というか、なんというか。

「そ、そんなのウソだ!」
「嘘なんて吐く必要がないんだけど」

家族が僕を捨てたんじゃなくて、僕が、君たちを捨てたんだ。

笑いながら言えば、周りの空気がさっきまでとは別の意味で、凍った。わずかに言葉を変えたことに周りは気が付いた。転入生は気付いていないかもしれないけど。周りが気付いてくれれば、後はどうでもいい。

「そんなの、そんなの、」

嘘だ。と、何度も繰り返す転入生は、頭が悪いとしか思えない。

「嘘じゃないよ。なんで嘘吐かなきゃいけないのさ」

転入生が家族のことを口にしなければ、こんなこと言わずに済んだのにと思いながら『彼』を思い出す。恋人であり、主でもある『彼』のことを。

転入生が来る前に、厄介な事になりそうだと言った『彼』はそれでも、楽しそうだった。今更お前のコトを探して見つけられたらまた一緒に暮らしたいだなんて、片腹痛いだろう。その言葉にすぐに頷いてしまった僕を見て『彼』は笑った。

「なあ、いい加減その鬘と伊達眼鏡、外したら?」

周りが驚いているのを見て、こんなに分かりやすい鬘と伊達眼鏡に何故気付かないのだろうと、不思議に思う。とっくに誰かが、これに気付いて外して、そうして僕に瓜二つの顔が仕舞われていることに気付いていても、良さそうなものだったのに。

「どうしてっ」

『彼』に拾ってもらえたのは、本当に幸運だったと思う。おかげで僕は人並み以上の生活をすることが出来ている。愛されて愛して、幸せとしか表現しようのない日々を送ることが、出来ている。

「その下にある顔が、僕と同じ顔だって、みんなは知ってるの?」

近付いて。耳元で囁けば、認めたくなかったことだったのか、顔色が悪くなっていく。

見ていて面白いと思いながらも、此処でやめようとは、思わなかった。この子がすべての原因じゃないけど。変わろうとする機会は与えられていたのにそれに気付かずにこうなってしまったこの子は、救いようが、ない。だからこそ鬘と眼鏡を取り払った。

「なあ、お前がどんなに望んだって、壊れてしまったものが完璧に元に戻る事なんて、ないんだよ?」

家族が捨てた。その捨てた相手を探しに来た、半身の事はどうとも、思わなかった。嬉々として語る姿を見て、今更どうしたんだろうかとしか。

「家族全員で一緒に暮らすことが、幸せだって?僕にとっては、不幸せでしかなかった。覚えてる?君はご飯をテーブルで食べてたけど、僕は床でしか食べれなかった。しかも、食べ物なのかなんなのか、よく分からない者ばかり。眠る時は、君はフカフカのベッドだったけど僕はタオルケットだけ。他にも、いろいろ。君が何を夢見てたのか知らないけど、あり得ないよ」

笑いながら言えば、転入生の表情が、なくなった。

--- ここまで ---


copyright (c) 20100210~ km
all rights reserved.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -