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ゆめのはなし

2013/06/09
誰からも嫌われるのは怖いという話
溺愛ヤンデレ美形×心配性(半精神崩壊)

どうしたんだよ。向かいの席に座っている恋人がそう言う。勉強の手を止めて、俺の顔を見て。途端、泣きそうになったのをどうにかして、堪えた。コイツに嫌われたら、どうしよう。生きていくことは出来ると思うけど、しばらくはきっと、立ち直れない。そんなことを、思った。

「別に、なにも」
「なにも、って顔じゃないんだけど」

ほら。言ってみ?そう言って優しく笑われて、言わない方が無理な話だった。今朝みた夢の話をした。

誰かに責められている。相手は分からない。ただただ、一方的に責められている。誰からも嫌悪感向けだしの視線を受けて。嫌われて、暴力をふるわれて。そんな、夢。自分が悪いかどうかすら、分からない。だから、謝ることもできない。どうして。そればかりが思考を満たす。耐えきれなくなって気付けば、飛び起きていた。そうすれば自分がいたのは、いつも通りのベッドの上で。だからか、酷く安堵した。あれは夢だったのだと、そう思った。もしもあれが、目を覚ましてからも続いていたとしたら。そうしたらきっと、自分はどうにかなってしまった。人からの悪意に、それも、大好きな人からすらそう言われてしまえば、耐えきれる自信がない。

「―――そんな、夢」

俯いて言えば、ばかだなぁ。と、笑って返された。

「だ、よなぁ」
「僕が、たくみのことを嫌いになるはずがないじゃないか」
「―――――おう」

それはどうか分からないけど。そんなことを思いながらも、遊佐の言葉が嬉しくて笑えば、机を乗り越えて額に熱が触れた。

***

「ほんと、ばか」

それは夢じゃなくて、ホントの話だったのに。悲しげに目を細めながら、たくみのことを見つめている男は、これからどうしようかと考える。たくみを痛めつけ、こうしてしまった相手をこのままにしておくつもりは、ない。自分と釣り合わないからと言った理由で、いじめられてしまった恋人は、少し壊れてしまった。あどけなく眠る姿からは、今はもう、何の苦しみも感じられない。これで本当に良かったのかどうかは分からないものの、何も知らないやつらにたくみを傷つけられたくはない。これ以上は。

「好きだよ、たくみ」

きっとたくみは、軟禁されていることにすら、気付いていない。異常な現実を、そうであるものだとして、受け入れてしまっている。

「――――――ごめん、な」

それでも僕は、たくみと独り占め出来るようになって、幸せなんだ。呟いた声は、たくみの耳には届かなかった。


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