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016~020

2012/07/29
片道切符/問いと答え/刷り込まれた幸福論/嫌いだと言いながら呟く言葉/その後のはなし。

016:片道切符
過去に戻ることはできない事を理解した途端、きっと近い将来、俺は壊れるのだろう。と、思った。緩やかに壊れる俺をみて、お前は何を思うんだろうか。軟禁される前の過去へ行く切符はない。未来へ行く切符しか。ない。だから俺は、告げる。
「好きだ」
俺の中で、何かが崩れ落ちていく音がした。

017:問いと答え
もしも明日。死ぬとしたら先生は、何をする?
思い出すのは、君の口癖。最後まで最期の時まで弱音すら吐かなかった君の最期の言葉も、同じだった。
そうだな。生きようか。いつも通り、単調な日々を過ごし、そして次の日に静かに息を引き取ろう。今ならきっと、そう答える。

018:刷り込まれた幸福論
物心つくころにはこの関係だった。この関係をなんと表現するのか、俺は知らない。決まった時間に家を出る彼を見送り、帰ってきた彼とご飯を食べて、風呂に入って、交わって。ごめんな。と、彼は言ったけど、俺には何が“ごめん”なのか、分からなかった。
(だって、すごく満たされているんだ、俺)

019:嫌いだと思いながら呟く言葉
その言葉が嫌いだった。言われることも言う事も。言葉にした瞬間、全て嘘になってしまう気がして。それなのに、同室者を見るとどうしても、その言葉が口をついて出てくる。
「………好き」
同室者が深い眠りについている時しか言えない言葉。まさか、それを聞かれているとは思わなかった。

020:その後のはなし。
近付かないでと、遠ざけたのは俺の方なのに。彼は俺の事を詰るだろうか。そうだとしても、彼をこのまま一人にしておけないと思った。これまでのこと、謝らないけど、俺は、
(だって一人は寂しいだろ、)


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