遠方から響いて来る打ち上げ花火の音が耳障りに感じられて、爆豪は舌を鳴らした。

枕元に置いていた携帯端末を点けると30分前に個人メッセージが一件入っていた。
切島からだ。好き嫌いあるかといった内容のメッセージへ簡単に返信した直後、家のインターホンが鳴る。
両親が居ないことを思い出して一瞬居留守を使おうかと考えたが、やはり思い直して気怠げに身体を起こした。

「あ、爆豪くん。こんばんは」

扉を開けるとそこに居たのは浴衣姿のみょうじだった。
人懐こい笑顔とビニール袋を携えて、切島くんに聞いちゃった、と言いながら笑う。
追い返してやろうかとも思ったが、近所からの目が気になって渋々家に引き入れた。

部屋へ通すと座卓の前に正座をして座る彼女へ、爆豪は麦茶を出す。
礼を言いながらビニール袋を漁って、たこ焼きと焼きそば、それから焼き鳥を取り出した。

「お腹空いてない?」

切島を介した返事が遅かったので勝手に見繕って来たと言うみょうじに、爆豪は眉を顰めながらも焼き鳥に手を伸ばした。

「お前何しに来た」
「爆豪くん一人で寂しくないかなって思って」
「アホか舐めんな」

爆豪の問いにけろりとした顔で返す。ぎろりと睨む彼に、しかしみょうじは全く動じない。
自分で買って来た手土産に手を付けない彼女は、さっきたくさん食べたのだと言った。
麦茶を流し込んでから横を見ると、みょうじは窓の外に気をとられている様子だった。

「こっからじゃ何にも見えねぇぞ」

しかし彼女は花火を見たいわけではないらしい。その首が頷くと、どこから聴こえるのか鈴の音がちりんと鳴った。
瞼を閉じて花火の音に耳を澄ましている。
爆豪が何とはなしにその顔を眺めていると、化粧をしているのか、赤い唇に目が付く。

普段あどけない彼女の、纏め上げた髪であるとか見慣れない浴衣姿であるとか、そういったものも一役買っていたのだろうが、なによりもその唇が大人びていて爆豪はその鮮赤色を舐めてみた。

「甘ぇ……」

思わず漏れ出た感想と共に眉根を寄せる。
唇を見つめていた瞼を持ち上げて見ると、上を向いた長い睫毛が瞬いて。
また、鈴の音を聴いた。

鮮赤色ー爆豪勝己

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