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ジドールでリルムを仲間に加えた俺達は、シャドウの様子を一度見に行くことにした。きっとリルムもサマサの村の様子が気になっていることだろう。

村に到着した途端、最初に走っていったのはリルムで、その後をマッシュとユカがついていく。シャドウの様子はあの3人から聞くことにして飛空艇で待っていたのだが、程なくして帰ってきたリルムは少し寂しそうな顔をしていた。

マッシュに話を聞くと、シャドウはこの村から出て行ったようで家には居なかったそうだ。代わりに分かったのは相手が向かった場所が闘技場だということ。

セッツァーに話を聞けばその建物はここから真逆にある大陸だといっていた。そういえば世界が崩壊した直後にコーリンゲンを訪れた際、戦いを目的とした場所を作りたいと言っていた男が居たのを思い出す。

シャドウに会う為にコロシアムに向かう途中、空路上にある狂信者の塔を調べてみようという話になった。魔力を感じると話すルノアの言葉でメンバーは魔法防御力の高い者達で決定した。ルノアにセリス、それからリルム、あとは俺を含めたメンバーで塔に向かったのだが、建物の麓に見知った顔がある事に気付いたリルムが大声を張り上げた。

「こらあ!くそじじー!!しゃきっとせんかあ!!!」

巻き舌によって発せられた大きな喝は漫然と祈りを捧げていたストラゴスの目を一発で醒まさせるものだった。娘が生きていたことに涙を流し、顔をくしゃくしゃにしてリルムを抱きしめるストラゴスは本当に嬉しそうだった。

「馬鹿ね。お爺ちゃん。元気出してよ」

「おお・・・わしはてっきり……」

「お爺ちゃんより先にいくわけないでしょ!!このおいぼれ!!」

「あいかわらず口の悪い子じゃ。…嬉しいぞい」

劇的ともいえる再会を果たした孫娘と祖父はまた一緒に旅をする。新たな仲間を増やした俺達は目の前に聳える塔を攻略したあとコーリンゲンの北を目指して飛んでいった。


飛空挺の甲板から見える円形状の巨大な建物。コロシアムという今までに無い特殊な場所に全員が興味を示したようで揃って中へと入っていく。

建物内に入るとそこは想像してた以上の人たちで賑わいを見せていた。屈強そうな男から盗賊のような者まで色々な人物が集まっている場所だった。人と人が戦うという戦争とは違う特殊な催しをする場所だが、自分の腕前を試してみたいと思う人間もいるだろう。
ましてやマッシュのような武道家ならば鍛錬の場所にもなり得るかもしれない。

マッシュとコロシアムについて話をしていたら、何かを発見したユカが俺達を呼びに来る。そして指で示された場所に目を向けるとそこにいたのは紫のタコだった。

「…オルトロスのやつ。なんでここに」

厄介な相手との四度目の再会に、条件反射で眉間に皺が寄る。遠目でオルトロスの出方を窺っていたが、今までとは違い邪魔をしてくるような素振りは無さそうだ。
今の状況に嘆くオルトロスと会話をし始めるユカとマッシュを眺めていたのだが、いつの間にか一緒にコロシアムに来た筈のルノアが自分の隣から姿を消していた。逸れたのかと思って辺りを見回してみると建物の入り口付近で立ち止まり、何故か遠く離れた場所からこっちを見ていた。

不思議に思いながら近づいて声をかけるものの、その目線は一向に同じ方向を向いたまま動く気配がない。しかもその表情ときたら、今までに見たこともないくらい険しい顔つきだった。心配になって肩をトントンと叩くと、剣を抜きそうな勢いで身構えたからこっちが驚いた。

「…どうしたんだ?ルノア」

「ぁ!?え、ええ、別に…ッ何も!!」

それだけ言うと視線はまたもオルトロスの方に向いている。もしかしてこういう類の生物が彼女は苦手なのかもしれない。試しに“気になるならもっと近くに寄ってみたらどうだ”と薦めれば、焦ったように拒否するのを見て推測は当たったようだ。

相手の嫌いなものを一つ発見出来たことに気を良くしていると、その間に懸命に動いてくれていたカイエンがシャドウについての情報を手に入れてくれた。話によるとコロシアムの参加者の中に全身黒づくめで『いちげきのやいば』を探している参加者がいるという噂があるようだ。

そういえば、シャドウが倒れていた洞窟で手に入れた刀がそれだったのを思い出し、賭けるアイテムは持っている事を伝える。あとは、このコロシアムで誰が戦うのかという話になり、真っ先に手を挙げたのはカイエンだった。

シャドウとの勝敗をカイエンに託し俺達はその様子を見ようと観客席へ移動する。試合が始まるまでの間、隣に座ったルノアにコロシアムについて聞いてみると首を傾げてみせた。

「鍛錬するのはいいけれど、人前で戦うのはあまり」

「確かにな。これではまるで娯楽の一環のようだ」

「戦う事が?」

「人間の欲求に際限は無いだろうからな」

ケフカが世界を崩壊させ、時代と思想が重なってこの場所が成立しているのであればそれもまた酔狂な話だ。世界に平和が戻った時、コロシアムが別の形となって環境と馴染んでくれることを願いながら熱狂の渦に包まれているカイエン達の試合を見届ける。

鬼気迫る2人の戦いは空気を読み合う刹那の争いで、瞬きすらも許されない一瞬の間に勝敗が決した。湧き上がる歓声のなか観客席を後にした我々は闘技場の入り口でカイエンを出迎える。そして共に戻ってきたシャドウに、もう一度戦おうと声を掛ければ黒装束を纏う相手は言葉と共に頷いた。

「修羅の道・・・究めてみるか」

ストラゴスに続きシャドウが加わり段々と仲間が増えていく。集まりつつある仲間達のなかで未だに場所さえ分かっていないのはロックとモグだけとなった。


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