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コロシアムを訪れた事で俺達は“ある人物”の場所を特定するための情報を手に入れる事が出来た。それを知るセリスが帝国兵の生き残りから聞いた話を飛空艇の中で俺達に話してくれる。

「『帝国に2度話しかけろ』それがガストラ皇帝が秘宝を隠した場所のヒント。…そう話していたわ」

そしてその話をバンダナをまいた俺達の仲間に教えたと言っていたそうだ。示された人物はロックで間違いだろうが、ガストラ帝国に話しかけるとは一体どういうことだろう。
既に亡くなっている人物と話をするなど不可能だが、二回という回数制限があるなら物という考えも出来る。皆に知恵を出してもらえるよう喋っていたのだが、頭の固い大人たちに代わってリルムがいとも簡単にその答えを導き出してしまう。

「ガストラ帝国になら会ったよ」

それは何処なのかと言葉の続きを催促すれば、自分が居た大きい屋敷にあったと答えたのだ。リルムがいた屋敷となれば、アウザー邸しかないと分かった瞬間、俺自身もあの場所でガストラ皇帝の肖像画を見たのを思い出す。そこに何らかの手掛かりがあるのならすぐに行ってみようと話が上がった。

その途中、コーリンゲンの家に立ち寄り奇妙な老人に話を聞けば、ロックは伝説の秘宝を探し求めて世界を飛び回っていると答えた。ロックがそこまでして叶えたいと思う先には一体何があるのだろうかと考えながら、今度は手がかりを求めてジドールへと飛んだ。

リルムと共にアウザーて邸にあるガストラ皇帝の肖像画の元に向かい、注意深く探してみると額縁の隙間に一枚の紙が挟まれているのに気付く。

『秘宝は、山が星型に並ぶ場所に隠した』

そう書かれた手紙を持ち帰り全員に見せたあと、期待するようにセッツァーに視線を注げば容易くその場所を探し当ててしまう相手。

「確か、帝国の大陸にそんなのがあった気もするな……。ツェンの近くか」

流石としか言いようのない彼の感覚に感嘆しながら、目的地の場所に到着するまでの間を準備の時間に当てていた。
暫くすると帝国領地だった大陸が見え始め、飛空艇は目的の場所である星型に並ぶ山の上空で停止する。何があっても不足がない様にしっかりと準備をしたあと俺達はその場所へと降りていった。

内部に入った途端、奇妙な仕掛けが行く手を阻み、一つのパーティーでは進めないことが発覚する。すぐさま別の一組を編成し、連携をとりながら洞窟内部を進むこととなった。

床を踏まなければ開かない扉や通路に敷かれた針山、入り組んだ地形の全てが作為的だった。ここまでして人が入る事を阻む仕掛けがあるのは、ガストラ皇帝が秘宝を誰にも取られまいとして作り上げた場所だからだろう。

互いのパーティーの動きを確認しながら進んでいった先で、マグマの中に僅かに見える石の足場を渡るという状況が訪れる。気をつけろとルノアに声を掛ければ、相手は汗を拭いながら煮えたぎるマグマを見つめて呟く。

「もし落ちてしまったら、どうなるのだろう…」

「不吉な事を言うのはやめてくれ。それから落ちるのは絶対に駄目だ。一瞬で消えてなくなるぞ」

「そんなに?」

「渡る自信が無いなら俺が抱きかかえて連れて行くが?」

「心配は要らない」

まるで水溜りを避けて歩くかの如く、危機感の欠片も感じさせず石の上を跳ねるように渡りきる彼女の後をついていく。
時折見つける宝箱を開けてはみるが、何故か中身が入っていないものばかりだった。その後も仲間と連携しながら道を切り開き奥へと進んでいった先で俺達は遂に探していた仲間の姿を発見することが出来た。

「ロック!!」

「みんな!!やっと…見つけたんだ。魂をよみがえらせる伝説の秘宝…」

ロックの手に握られていたもの。
それは緑色に輝く魔石だった。

「そうだ…はるか昔、フェニックスは自らを石にかえたという伝説がある。やはり本当だったんだ…」

自らを石に変えた…そのフレーズを思い出そうと自分の記憶を遡っていけば、ゾゾの町で出会った幻獣ラムウが言っていた筈だ。

“自ら魔石となりお前達の力となろう”

ラムウが俺達に告げた直後、目の前で魔石化したのを目の前で見た事を思い出す。

なのにロックはどうしてフェニックに対してだけ伝説が本当だと言ったのだろう。もしかするとフェニックスには他の幻獣にはない特別な力があるのかもしれない。深い考えに陥っていると、ロックは手の平にある魔石をじっと見つめながら言葉を続けた。

「しかし…ヒビがはいっている……これでは、きせきの力を起こすことはできないかもしれない」

聞えて来た言葉の中から突出して聞えて来たのは“きせき”という単語で、ロックが長い間探し求めていたのは特別な力だったんだと理解する。
そしてそれがどんな奇跡をもたらすものなのかは、相手の今までを知っていれば想像するに容易かった。

「ロック…レイチェルを……?」

魔石を持ったロックに話しかけるセリスは途切れ途切れに言葉を発していた。彼女の心中を察すれば、それはとてつもなく苦しいものだろう。けれど今までその思いをずっと抱えたまま戦い続けてきたロックにとって、逃げることなど出来ない大事な思いだったのかも知れない。

「俺はレイチェルを守ってやれなかった…真実をなくしてしまったんだ…。だからそれを取り戻すまで俺にとって本当の事は何もない…」

きっと失ってしまったあの日から永遠に繰り返される思い。自分だけでは見い出すことの出来ない自問自答を続けていたのだろうか。彼女のためであり、そして自分自身の為にもフェニックスの奇跡の力をロックは手にしたかったんだろう。

「行くのか?コーリンゲンまで…」

俺の問いかけに無言のまま頷いたロックと共に俺達は洞窟を抜け、コーリンゲンの村に向かっていったのだった―――。


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