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日没が差し迫る時間帯になった頃に、ようやく帰ってきたマッシュとユカとセッツァー達。
そんな大人3人を後ろに引き連れて元気一杯飛空艇に乗り込んできたのはガウだった。
腹が減ったと連呼しながら飛び跳ねるように船内を駆け回り、げんきかげんきかと全員に同じ言葉を掛けている。
あいも変わらずの快活振りに翻弄されながら賑わいのある夕食をとっていると、ご飯を食べていたガウがこんな情報をもたらしてくれた。

「まっくろくろのヤツにあったぞ。イヌもいた!!」

黒と犬。言葉の関連性とガウが知っている人物となれば導かれる答えはシャドウで間違いなさそうだ。目撃した場所は獣ヶ原にある洞窟辺りだというので、明日になったら捜索してみようと話が上がった。

その次の日。朝を迎えシャドウを探しに出発するメンバーを募れば、手を挙げてくれたのはルノアとカイエンだった。その他に案内役としてガウを加えて、俺を含めた4人に決定した。

飛空艇を出発し獣ヶ原の洞窟へ到達すると、入ってすぐに犬が咆える声が響いてくる。俺達を見つけて近寄ってきた犬をよく見ると、シャドウの連れているインターセプターだった。

まるでついて来いといわんばかりに咆える様子にシャドウに何かあったのかもしれないと勘ぐる。インターセプターの後を追って洞窟の内部を進む途中、宝箱の中から手に入れたのは刀の形状によく似た武器だった。誰かが装備できるだろうとアイテムを入手したあと、さらに奥へ向かった場所で目にしたものはうつ伏せで倒れるシャドウの姿だった。

急いで駆け寄りシャドウの容態を確認している俺達の後ろで、密かに巨大なモンスターが気配を消しながらゆっくりと差し迫ってきていた事に誰も気付いていなかった。
それにいち早く気付いたインターセプターの咆える声に誘導され振り返れば、そこには見たこともない様な強靭な肉体を持ったモンスターが鋭い歯を剥き出しにしながら立っていた。

突如襲い掛かってきたモンスターは太い腕を振り下ろすと地響きのような大きな雄叫びを上げて、空中から炎を押し固めたような炎の塊を幾多も放ってきたのだ。
防御する間もなく攻撃を喰らい、皮膚が炎の熱で焼かれて茶褐色に焦げ付いていく。
強烈な痛みに耐えているとルノアがすぐに全員に対して回復魔法を詠唱し態勢を維持してくれたが、続けざまに高位魔法を発動させる敵に行動が後手に回っていく。

このままでは回復が間に合わないと踏んだ俺はルノアに姿を隠して戦う戦法を伝えた。
その手段を彼女に委ねれば、すぐに魔石ファントムを召喚させる。
幻獣の恩恵によって姿が消えればモンスターの魔法や攻撃は当たらずダメージを受けること無い。全ての攻撃を魔法以外に変更し戦い続ければ、程なくして俺達の勝利は確定した。

しかし、戦闘を終えて一息つく間もなく、背後から感じた気配に気付き全員が振り返る。すると、そこにいたのはついさっき倒した敵と同じ姿をしたモンスターだった。
自己蘇生の類かと勘ぐりながら魔法攻撃に留意しつつ戦闘に移行するのだが、敵の攻撃が近距離になったことや攻撃をくらったガウが状態異常に陥り眠ったのを見たとき、さっきの個体とは別の種類だと理解する。

強靭な腕を振り下ろし四連撃を繰り出してくるモンスターの攻撃を受けながら反撃をしていると、炎が効く事を教えてくれたルノアの情報を元に炎魔法で攻めていけば敵は炎を毛嫌いするように暴れまわり呻き声をあげているのに気付く。
炎を如実に嫌う反応に、もしかすると相手はアンデット系かも知れないと推測を立てた俺は、アイテムから聖水を取り出し目の前の敵に向かってそれを投げつけた。

普通の敵に使ったところで何の効果ない代物だが相手がアンデットなら話は別だ。そして自分の読みどおり割れた瓶から流れ出す聖水に触れたモンスターは見る間に浄化され俺達の前から塵のようになって消えていった。

長引いた戦闘をようやく終え、倒れたシャドウの様子を再確認するのだが、ここでは手当てが出来ないくらいの酷い傷を負っていた。相手を慎重に抱えて飛空艇まで戻り、そのままの足でサマサの村まで急いで向かう事を即決した。

船内で仲間に対して経緯を話し、ストラゴスの家を借りてシャドウを休ませる事を話すとマッシュが率先して家まで運んでくれる。それをサポートするように後をついていくユカの姿を見て、2人なら安心だと看病を任せることにした。

これで肩の荷が降ろせると、張り詰めていた緊張を解けば、自分の体が重く感じる。カイエン達と一緒に戦いで負った傷を癒しながら休憩をとったあと、俺は破れてしまった服を着替えるために部屋へと向かった。

上着に手を掛けながら何気なしに窓に目を向ければ、そこから見た景色についさっきまで一緒だったルノアが一人でサマサの村に歩いていく姿が映った。

自分で考え行動する機会が増えてきた彼女にあまり干渉するのは好ましくないと感じた俺は、このまま飛空艇で大人しくしている事を選んだのだった。

飲み物を口にしながら、机の上に並べたのは今まで訪れた町に関して自分なりにまとめた資料だ。それとの睨み合いに暫くの時間を費やしていると、不意に控えめなノックが扉から聞えてきた。

返事をして相手が入ってくるのを待てば、部屋を訪れたのはサマサの村に向かったルノアだった。
きっと本でも読みに来たんだろうと通例のようにソファーを勧めたのだが、そこを通りすぎた彼女は俺の前までやってきて、そして止まった。

「……………エドガー…」

名前を呼ぶ相手の雰囲気がいつもと違う事に気付き、安易に言葉を発するのは控えておこうと咄嗟に判断する。
彼女のタイミングが整うまでの時間を見守るような気持ちで待っていれば、一呼吸置いたルノアがもう一度俺の名前を呼んだ後、ゆっくりと話しを始めた――。


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