小休憩ですが。

よし、やっと一段落だな。部屋はピカピカで俺好みになった。外は綺麗なオレンジ色。

一室だけでこんな時間かかったのか。なんでも、シミや臭い取りが…

風呂入りたい。ふらふらと覚えたての風呂の場所へと歩いた。歩く度に何かが俺の横を通り過ぎるんだよな。ここの虫ってそんな速く移動するんだな。

うわっ、こんなところに包丁置くなよ。

床に刺さってるいくつかの包丁を眺めただけで気にしなかった。





やはり風呂場も汚かった。カビやらタイルの亀裂…湯船によく分からない液状が入ってる。臭っ。

「元に戻れ」 んのか、これ。

その時、またよくわからない光が風呂場全体に流れた。どういう仕組み。どこから光が出てんの。予告もないと目が潰れる。

目を開けたらツルッツルのピッカピカの風呂場に大変身していた。すごい。マジックショーだ。あまり理解できてないけど片付いたんならいいや。

二つの蛇口を捻って温度調節を行った。こうやって水とお湯を自分で調節するの初めてだった。面倒臭いから最新のにしよう。

素早く身体や頭を洗って湯船に入る。

俺は長湯派だ。一時間なんて余裕。温泉巡りとかよくやってた。

ここの湯船、大人三、四人は入るんじゃないかってくらい広い。光熱費高くつくだろう。政府が払うって言うからいいけど。

緊張をほぐして顔を上に向ける。

あーいいお湯…って、天井に傷が付いてる。直そうかな、と届くわけでもないのに手を上げた。

結構深く入ってんのな。手を降ろして一息つく。


ドッパーン

上から何かが降ってきた。俺の上に、天井から。大きいものが。

いや、え?

思考回路が停止して湯船の湯が飛び散る様を黙って見守るしかなかった。上を見ると落ちてきた真上の天井が四角く抜けていた。

「……。」

「……。」

天井から男の子ですか。しかもすごい綺麗。肌も服も白くて、薄い桃色の頭の子。

どんなシチュエーションなの。というか天井裏に人いたのめっちゃ怖い。

湯船の淵に肘を乗せて手のひらで頭を支える。目の前の子について考えて頭重くなってきた。

男の子が口を開いた。この子は服着て俺は真っ裸って、どんな変態だよ。これまた新しい顔で。



「たすけて」

ほとんど声になっていなかった。何言ってるかわからなかったけど、口を動かしていたのはわかった。

「痛いのか。」

だって痛そうな顔してる。

「痛い…全部、痛い。」

そうかそうか。

「可哀想に。」

「え…」

ネズミ退治で天井裏にいて全身筋肉痛になったのか。辛いよな。わかる。丁度この天井が脆くてよかったな。他だったら身体が床に打ち付けられてもっと痛くなってただろうに。

腰を上げて湯船を出る。

腰にタオル巻いててよかった。今度敷地のどこかに温泉作ろうかな。政府に頼めばやってくれそう。

「助けてくれないの…?」

寂しそうな目をした。あぁ、身体動かせないのな。

腹に腕を回し持ち上げる。服が湯を吸ってすごく重い。なんとか淵を乗り越えて風呂用の椅子に座らせた。

「身体洗え」 ばいいよ。頭とか埃付いてるし。

籠を入口付近に置く。そこに服を入れるように言って風呂場を後にした。

あの子の分のバスタオル必要だよな、と思って部屋に取りに戻った。

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