沢山食べる子は嫌いじゃないですが。

「ごちそうさま。」

手を合わせて一言。さっきいただきますの挨拶を忘れたのはめちゃくちゃ腹が減っていたから。

ガツガツ食べていたポニーテールもやっと食べ終わったらしく、腹を摩っていた。口の周りに飯粒ついてる。

「…?」

ポニーテールが俺の真似をして手を合わせた。だが、首を傾げている。この動作が何の意味なのかを理解していないようだ。

ポニーテールの隣に座って飯を食わずにずっとポニーテールを見ていた骨喰が丁寧に教えていた。

もしかして、こいつもここ来て間もない感じか?新しい環境に慣れなくて飯が食えないほど不安定だったのかもしれん。そう考えるとさっき泣いていたのもわかる。

骨喰も安心したように飯粒取ってあげていたからこいつも心配してたんだな。本当は良い奴じゃないか。

この二人の友情の邪魔にならないようにさっさと食器洗って部屋に戻ろう。

「…!」

皿を重ね、空になったポニーテールのお椀も取って席を立った。水を出し、スポンジに洗剤、泡を立てて洗う。一人暮らしも長かったから慣れたもんだ。

ガタガタッと音を立て慌てながら隣に来たポニーテールを横目で見る。俺を見上げ、口を開閉させて何かを言おうとしていた。開いては閉じ、の繰り返し。それは皿を拭き終わるまで続いた。

…まだ腹減ってんのか。いつまでもパクパクされてもな…空気食っても腹の足しにはならないぞ。骨喰はあそこから動く気配もないし。

えーと、冷蔵庫の中には…確か、苺があったはず。

開けてみるとやっぱり大きな苺がボウルの中にたくさん入っていた。どれも全く傷んでいない、採れたてのようなもの。誰かが採ってきたやつを申し訳ないが拝借させてもらおう。

軽く水洗いして試食。甘い。美味い。

俺の行動をずっと見てたポニーテールに一粒苺を差し出す。俺と苺を交互に見ておずおずと受け取った。

ポニーテールが苺を口に含み、何回か噛んだ後ごくんと飲み込む。無言。あー、これは美味しすぎて無言になるやつだ。よくある。

まだ食べたいらしい苺をボウルごと渡した。美味しいもんな、この苺。美味いのその先の言葉が見つからないんだろう。わかる。そういう時は、

「無理に喋らなくてもいい」 んだよ。食べることに集中するべき。美味さなんて自分が知ってたらいいんだから。

どこ産だろう、と考えながら部屋に戻った。

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