低血圧ですが。

平和な一日が終え、朝目を覚ます。そしてバッチリと俺を覗き込んでいるヤツと目が合った。

「っ…」

そいつはすぐさま飛び退いて部屋の壁に身を寄せた。俺が1番びっくりしたわ。「誰だ」 よお前。知らんやつのドアップとか望んでねぇぞ俺。

「誰だ。」

のそのそと体を起こしてそいつを見る。寝起き目が霞んで見えない。第一声も掠れていた。

「…骨喰、藤四郎。」

ほう、骨喰藤四郎。君、俺の寝顔を見たな?結構恥ずかしいんだ。

自分の名前を喋ったもののそこから何か言うわけでもなく、動かずに身を小さくしていた。何しに来たんだ。

よくわからないから着替えることにした。寝巻きは決まって和装だ。着替えるのが楽だからという理由だけだが最近のマイブームだった。

まだ整理しきれてない服をダンボールから取り出す。といってもほとんどがワイシャツ、スーツと硬い服しか入っていない。ラフな服は数えるくらいしかない。

しっかし、こんなに着替えにくいとは。いそいそと脱ぎ始める。別に男同士だから裸見られるのはどうってことないが…男、だよな、そうと言ってくれ。



「俺は…あんたを、殺そうとしているんだ!」

…なになになに。急に何。え??うそ、まじで??まってまって、死ぬ。俺死ぬ。迷惑だろうと思って後ろ向いて着替えたのに!背中ガラ空きだよ。死ぬ。

「あんたが俺らを解放して、何を企んでいるのかかわからない…だが俺は!」

絶対に、殺す。

「なぜ俺を殺す。」

なんで??俺何もしてないよ!初対面じゃん!殺される筋合いないから!話し合いましょう?!


「兄弟に、あんな、酷い事をした人間が…憎い…っ!」

俺ここ来たばっかり。君の兄弟なんて知らないし、人違いなんじゃないの。そもそも刀に兄弟とかいることにびっくり。もしかしてナントカ派みたいに分かれてるのってそういう事?

全然話聞いてなかった。「興味無い」 し。

なぜか急に骨喰が何も喋らなくなった。着替えるの待って話し合いしてくれるのかな。だったらすぐ着替えよう。

俺のいつもの服装、スーツ。無難だ。ワイシャツにネクタイ、ジャケットに腕を通してボタンを1つ閉めるだけ。

着替え終わってくるっと振り返ると骨喰は肩を震わせて俺を睨みつけていた。

「俺らが、どんな思いで耐えて、」

ごめん、俺の着替えに時間使っちゃって。そんな怒んないで。それじゃあ飯でも食いながら話そうよ。

部屋を出ようと歩き出すと扉の前に骨喰が立ち塞がった。

「……。」

しばらく見つめ合う。全然逸らさないから俺も負けない。「何がしたいんだ」 全く。

よく見ればこいつ、顔傷だらけだ。頭もボサボサじゃないか。そういえば服も。どっかの森で遊んできたのか?無邪気だな。ついでに風呂も沸かしてやろう。

1歩前に進むとビクッと肩を揺らした。あぁ、目を合わせながら歩くのはさすがに怖いよね。ごめん。

カタンといきなり扉が開いた。誰かが開けたんだろう。

兄弟、と確かに骨喰は言った。

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