紅月

「玲吾。」

「あ、鬼龍。ちょうどいいところに来た。」

ぷらぷらと散歩がてらに歩いていたら鬼龍が前から歩いてきた。

「…また迷子か?」

「ご名答。」

親指を立ててキメた。

「はぁ…探したんだぞ。」

「どこでやるか聞いてなかったからさー。いつもいつも悪いな。」

よく道に迷うし世話になってる。

「さ、行こう。」

「…おう。」

紅月が練習しているところへ歩き出した。

「…蓮巳、元気にしてっかなー。」

会うタイミング失って全然会ってなかったし顔見たい。

「神崎くん、俺のこと覚えてたらいいなー。」

自然と口角が上がる。

「……。」

「どうした。顔怖ぇよ。」

すげぇ顰めっ面。迫力半端じゃない。

「おーい。」

顔を覗くと、フイッと顔を逸らされた。

「…あ、ヤキモチか?」

「あぁ。」

まさか肯定するとは思わなかったけど。

「ははっ、俺の恋人かよ!」

「違うのか?」

「えっ、そうなの?」

初めて知ったぞ、俺。

「…冗談だ。」

と言いつつ複雑な表情をする鬼龍は何を思ってるんだろうね。

「俺は皆が恋人さっ。」




_______





「…お、聞こえる聞こえる。」

紅月の特有なメロディ。全く…いい曲ばかり。

「いつまでそこにいるんだ?入るぞ。」

気づけば扉の前で突っ立っていた。

「つい、な。」

鬼龍はそうか、と笑って扉を開けた。

「はろー。」



「玲吾…?!」

「!!」

勢い良く振り返る二人。めっちゃいい反応。

「俺のこと覚えてんのー?」

「当たり前だっ!!玲吾殿!」

「久しいな。」

「おー。久しぶり。」

先ほどまで練習していたのか二人とも汗が流れていた。

「やっぱりその衣装重そうだね。」

「一応軽めに作っているんだが…」

近くにいた神崎くんの襟のところを触って確認してみた。

「あ、本当だ。」

なるほど。でも抵抗あって動きづらいのによくあんなに動けるよな。きちんと襟を直してやった。

「す、すまない…」

「どういたしまして。」


「今日は、ただ見に来ただけか?」

蓮巳が口を開く。

「基本見学で気が向いたら。」

少し観察したくてさ。


「さぁ、見せて。」

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