頭もやもや

羽風薫side


「え?今から?…うん、いいよ。」

女の子から電話がありデートのお誘いがきた。今日は他の子との約束はなかったような…まぁいいや。待ち合わせ場所は…

「呑気じゃのぉ。」

「…のそっと暗いところから現れないでくれる?朔間さん。」

心臓に悪いんだけど。

「我輩は玲吾くんに会えなくて寂しいんじゃあ…」

あぁ、確かに二ヶ月くらい見てないな。

「あっそ。」

別に俺はあいつの事なんか興味ないし。だから何。

「玲吾くんが出ると聞いて買った雑誌には、玲吾くんと密着しとるやつがおってな…」

「……。」

「この前の歌番組見たか?玲吾くん、最高だった…それでの…」

「ッうるっさいなぁ。」

あいつの話なんか聞きたくないんだよ。朔間さんも朔間さんで、なんで俺にそんなどうでもいい事言うわけ?

「…どこに行くのじゃ?」

うっざ。言葉を無視して早歩きでその場を離れた。



「いつになったら素直になるんだか。」

扉が閉まる瞬間そんな声が聞こえた。うるさい。そんなことわかってる。わかってるけど…

「あーもうっ…面倒くさい。」

とりあえず気分転換しに行こう。




───────





「…はぁ?」

あぁもう最悪。あいつが中庭のベンチに座っているなんて。

ぜんっぜん気分転換にもならないんだけど?!逆にテンションも下がったし。俺って運ないのかなぁ。

いつもなら無視して通り過ぎていた。今回も気にしていないふりをして、通り過ぎようとした。


「…寝てる、のか。」

背もたれに寄りかかって目を瞑っているこいつに、なぜか近づいてしまった。ため息が出た。なんでこんな所で寝れるのかってことと足をとめてしまった自分に。

自分がわからなくなってきてる。

こいつのことは顔を見たくないくらい嫌いなはずなのに、なにかしら理由をつけて、雑誌も、ドラマも見てしまう俺がいた。

一緒にいた女の子が見ていたからとか、たまたま映ってたから…とか。今も実際こいつの前に立っている。いつも通りにすればいいのに。

「……。」

気がつけばこいつにキスをしていた。


「っは…?」

とっさに顔を遠ざける。俺、なにした…?

さっきのことを思い出して顔が熱くなるのがわかった。

「なんで、俺…」

俺がこいつにキスなんて。なんでそんなことをしてしまったのか全然理解できない。ありえない。頭が真っ白になっている。

うん、なかったことにしよう。そうと決まれば、はやくここから逃げ…


「寝込み襲うとかなんなの?」

「わぁああっ!!」

「それとも俺を女の子だと勘違いしたとか?」

腕を掴まれ体制を崩した俺は張本人の上に倒れてしまった。顔を上げたらバッチリ目が合う。こいつは俺を見て怪しげに笑った。




羽風薫side終

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