嫌い?

「え、は…?起きてたの…?!」

俺を力ずくで押し退けて2、3歩下がる羽風。いや俺も内心驚いてるわけだが。

「うん。羽風が『寝てるのか』って一人で言ってるところくらいから。」

「最初からじゃん!!」

真っ赤な顔していつもより騒いでる。

「…んで、どういうこと?」

「っえ…と…」

説明してくれないとわからないよ、あの行動は。羽風は顔を横に向けて口元を手で隠した。

…本当は俺のこと嫌いじゃない?そんな訳ないか。

「俺が女に見えるわけがないよなぁ。あーもしかして、罰ゲームとか…って、え?」

顔を上げると泣きそうな顔をして俺を見ている羽風がいた。

「は…?なに、どうした…?」

立ち上がり羽風に近寄る。よく見れば震えてるじゃないか。

「…ッ」

「俺が…怖い?」

思わず羽風の手首を強く掴んでしまった。

「あ…」

目を見開いて俺を見たが瞳がゆらゆら揺れている。

「おい、どうした…」

「怖いよ…怖いんだ!!自分がっ!!」

ハッキリとそう言った。


「…え?」

どういうこと。

「もう、わかんねぇ…」

手で顔を覆ってるから表情が読み取れない。

「いい加減離せッ…!!」

必死に俺の手を振り解こうとしているが力が入っていない。今しか聞けないんじゃないかって思った。

「なんで俺のことがそんなに嫌いなんだ。」

俯いたままビクリと震える羽風。前はしつこく聞いていた。俺を嫌う理由を。何か無意識で羽風の嫌なことをしているんだったら…って。

でも最近は前より拒まれている気がしてもうどうでもよくなって。今羽風が泣きそうなのは俺が関係しているんじゃないかと直感で思った。

「わかんない。」

俯いて小さな声で話し出す。

「…本当は嫌いじゃないはずなんだ…でも身体が言うこと聞いてくれない…アンタが、ステージに立ったときから…!!」

「……。」

元々俺らは少し話すくらいで仲が悪かったわけではなかった。拒まれるようになったのは…俺がステージから降りた後だ。


『…羽風?』

『あ…玲吾…』


やっぱりあの時からなんだ。

「何て言えばいいか全然整理できていないけどっ、」

羽風はぎゅっと口を結んで俺を見る。

「俺は…玲吾が…っ!!」


「久しぶりに名前で呼んでくれた。」

「…は?」

「嬉しい。」

「はぁ?!」

羽風の頬がだんだん赤くなっていく。

「〜ッ!!うるさいっ!!」

そう言って光の速さで俺の元から去っていった。

「えー。」

行っちゃったよ。もっと話せるかと思ったのに。でも前に一瞬戻れた気がしたから次会ったときは普通に話せるかな。自然と緩む口元を抑えてまたベンチに座った。

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