波乱の予感

「お疲れ様でした!」

今日の分の撮影は終了した。予定よりだいぶ進んでいるみたい。とりあえず、一安心だな。トラブルがあったらしいけど気合い入れた。

「海崎くんがほとんど一発で決めてくれたおかげだわ!」

「いえ、そんな。他の方もすごかったじゃないですか。」

少しのコミュニケーションも必要と教わったから実践する。今日は学校行こうか迷うな。

喧嘩のシーンで足首捻って歩きづらいし。

「…はぁ。」

初日にしくじった。保健室だけでも寄ろうかな。テーピングの材料揃ってるだろう。周りに気づかれないようにスタジオの廊下を歩いた。

「あ、あの!」

「……。」

「海崎さん!」

「あ、俺っ?」

まさか俺を呼んでたとは思わなかった。振り返ってみると前回ドラマで主人公を演じていた俳優さんがいる。

「橘さん。」

橘颯太(たちばなそうた)さん。俺と同じ歳で違う高校の芸能科に通ってるらしい。

「久しぶり!…です!」

「お久しぶりです。」

「呼び捨てでいいって言ったのに!」

俺より15センチ小さい165センチの橘さん。

「橘さんも俺を呼び捨てにしてくれるなら。」


「えっ…玲吾…くん!!」

「颯太さん。」

かっこいい、と言うよりは…かわいい。ベージュ色の短めのストレートな髪。その通ってる制服を少し着崩している。

「な、なに、なんか俺の顔についてる?!」

ペタペタと自分の顔を触っていた。

「いや、颯太さん絶対モテるだろうなぁって。」

「えぇ?!」

あたふたしてる。忙しい人だ。

「っ学校!!今から学校行くの?!」

「はい。」

「俺も行く!!」

「…え?」

予想外の展開で驚きを隠せない。

「あ、いや、違くて!!一緒に帰りたいなぁ、って…」

「そういうことですか。いいですよ。」

「やった!」

二人で話をしながらまた歩き出した。




________





「玲吾くん、右行くんですか?」

分かれ道、ふと立ち止まる颯太さん。

「颯太さんは左?」

「そうです。ここでお別れですね…」

悲しそうな顔をした。


「…玲吾殿?」

「あ、仙石くん。」

買い物袋を片手に持っている仙石くんがいた。

「……。」

「隣の方はもしかしてドラマの…」

キラキラした目で見てる。

「…じゃあ、またね!玲吾くん、それと…お友達さん。」

颯太さんは足早に走って行ってしまった。

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