主役

「はぁ?!」

「うるさいですよ。」

職員室全体に俺の声が響いた。

「待って、もう一回言って。」


「…一度で理解してください。貴方の友人役として出演していたドラマが続編決定となりました。次は友人サイドになるので、貴方が主役です。」

…え?

「まじで?」

「監督直々の推薦ですよ。」

まだ理解できてないんだが。続編決定…主役…え?

「そのついでですが、主題歌も玲吾くんが歌えるように頼んでおきました。」

「はぁっ?!」

主題歌?!歌うのか?俺が?なんてことをしてくれたんだ椚先生。

「ということで、明日から三日間は普通に通学時間までに学校来てください。」

「…ん?」

待て待て待て。


「朝からトレーニングしてもらいますよ?」

笑顔で言うこの人はなんと鬼のような人だ…

「放課後だけでいいって…」

「時間が足りません。」

そんな即答しなくたっていいだろ。

「明日から三日間も早く起きないといけねぇのかよ。」

「生徒皆同じ気持ちです。」

「はいはい…」

こればかりは仕方ないよなぁ。





――――――――――――




…ついに来てしまった。本当はギリギリまで行こうか迷っていて少し遅れたが結局来た。

周りには人がいない。静かに階段を登り教室へ。3-Bの扉の前に立ち止まる。

「……。」

なぜか少し緊張してる。いつも通りでいいんだ。グッと手を握ってから扉を開ける。

一斉に皆がこっちを見た。

「…おはよ。」

皆に向かって挨拶したのにポカーンとしてる。

「ふはっ…アイドルの顔じゃないよ。」

だんだん表情が変わっていく。

『おはよう』

皆の声が揃った。…笑顔だった。それが嬉しくて。心が温まる感じ。

「やっと来ましたか。」

「…げ。」

「何です?その反応。」

椚先生が教室に顔を出した。

「何もない。」

「今からボイストレーニングしますよ。」

「うわ、いきなりハード…」

椅子から立ち上がる。


「玲吾。」

隣の席の日々樹が俺の腕を掴んだ。

…あー、久々。fineとは無意識に会わないようにしていたから。最後に日々樹と話したのはいつだっけ?

…なんて、考えても無駄か。

「暇だったら、見に来ていいよ。」

髪に少し触れると俺を掴んでいた手が緩んだ。

「早くしてください。」

「うぃー。」

手を離し教室を出た。

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