慣れてないだけ

しばらくして守沢は体育館に戻っていった。終始笑顔だった守沢に安心感を覚えた。守沢の様子がいつもと違う気がしてたし。

まぁ、何ともなさそうだからいいけど。

「…そこにいんの誰ー?」

椅子に座りそこを眺める。無言で出てきたのは誰だろうか。


「…やっぱり高峯くんだ。」

困り顔の高峯くん。

「どうしたの?」

「…忘れ物、取りに来たんスけど…あの、決して盗み聞きしたわけじゃ…」

「聞いてたんだ。」

「…すいません。」

高峯くんはずっと俯きながら話してる。

「いや、別にいいんだけどね。」

「え…?」

やっと顔が上がった。

「皆こんな感じだよ。俺がスキンシップが過剰なだけ。」

「……。」

無言で俺を見ている。


「俺さ、高峯くんの接し方がわからないんだ。」

自分で考えても答えが出ないなら本人に聞けばいい。

「どう接すればいい?」

一瞬悲しそうな表情をしてるように見えた。

高峯くんが俺の方へと歩いてくる。

「高峯くん?」

向かい合わせで立ち止まった。

俺が座ってるから必然的に見上げる形になる。




─────────
高峯翠side


「…俺に、触れてください。」

「…はい?」

俺自身恥ずかしすぎて次の言葉が出ない。急に触れてくださいとか気持ち悪い…

でも返ってきた言葉は意外だった。

「いいの?」

「…っえ?」

「ん?」

なんで引かないんだよ。頭ん中どうなってんの…


「…あの時は、すいません…でした。」

この人に言える気がした。

「え?」

素直になりたい。

「びっくりして咄嗟に出てきた言葉だったんで…本当は、」

手を引かれぎゅっと握られる。

「っ…?!」

な、何…

「やっぱり、苦手そうだね。」

「そんなことない、から。」

熱い。

「無理しなくていい。」

だんだん離れてく手。俺はその手首を掴む。この人は目を丸くした。

「…慣れてないだけです。」

「ははっ、変なやつ。」

…笑われた。

「高峯くん、しゃがんで。」

「…?」

言われた通り屈むと俺が目線を上げるくらいになった。


「頭撫でていい?」

心臓破裂するかと思った。

「そんなこと、聞かないでください…」

この人はごめんな、と笑って髪に触れる。…こんな感じなんだ皆。

落ち着くような安心できるような。


「玲吾先輩…」

「んー?」

「…なんでもないです。」

もっと、とは俺にはまだ言えない。




高峯翠side終

prev / back / next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -