嫌われちった
「なんで着いていくって言ったの?」
保健室に行こうとしたら高峯くんに止められ俺も着いていく、と言われた。
たまたま保健室に誰も居なくて勝手に借りようとしている。
「え、なんでだろう…」
まじか。…無意識?
「お。ここ下着もあるー。」
なんでここに?って思うけど、まぁいいや。とりあえず脱ごう。
「あの!!…ッ?!」
ずっと俯いていた高峯くんがバッと顔を上げた。そして俺を見て固まりやがった。
「なに?」
そう言っても全然動かない。顔赤くなってる?
「…おーい。高峯くーん?下着も着替えたいんだけど、ずっと見たままでいいの?」
「すみませ…!」
今度は勢いよく俺に背を向けた。どうしたんだろ。
「そんなに俺の身体が見たかった?」
なんとなく冗談で言ったのに。
「はぁっ?!ち、違っ…!!」
なんか悲しい。
「はいはい、ごめんね。着替えたよ。」
恐る恐る振り返る高峯くん。着替えた俺を見てホッとしたのはなぜだい?
─────────────────────
高峯翠side
おかしい。なんか、変だ。
「髪濡れたままかー。」
この人は髪の毛を片手で掻き上げた。
ほら、今も。
「ちょ、高峯くん。」
「!!な、なに…」
名前を呼ばれる度に、なんか…
「それはこっちのセリフだよ。ボーッとしてるぞ、なんかあった?」
「いや、別に何も…」
なんで全て俺を見透かすような。俺なんてまだこの人の名前も知らないのに
「あ、そういえば俺名前言ってないよね。」
この人は海崎玲吾と言うらしい。やっと少し知った。
「海崎先輩…」
「名前でいいのに。」
控え目に笑う。
「ッ玲吾…先輩。」
「うん、ありがとう。」
俺の頭の方へ玲吾先輩の手が。
「や、やめてください…!!」
それを拒絶してしまった。
「…ごめん。」
「…あ…俺…」
違う。違うのに。
「…今日はやっぱり帰ろっかな。深海と守沢にごめんって伝えといてくれる?」
俺を横切って保健室の扉に手をかけた。
「ま、待っ…」
俺も驚くくらい震える声だった。振り返って俺を見るなり今度は優しく微笑んだ。
…もっと嫌いになった。俺自身が。
…鬱だ、死にたい。