無意識

「あ、あのっ!!」

「…え、あ。ごめん。」

俺の手を振り払った。うむ、悲しい。

「誰ですかあんた!!なんで俺を引っ張るんだよ!」

大層怒ってるようだ。

「少し馴れ馴れしかったね。」

ガシガシと頭を掻く。

「引っ張ったのは特に意味はないから忘れてくれ!…じゃ、ばいばい。」

「え?!あ、あの…!」

その人の言葉を無視して歩き出した。



…今思えば、なんで引っ張ったんだ?何か理由があったわけでもないのに。無意識って怖ぇ。ま、椚先生から助けることができたし俺は満足だ。

「噴水、行ってみようかな。」

天気もいいし。水浴び日和ってか。どっかの誰かさんが言ってそうな言葉だけど。あ、やべぇニヤけてきた。


「…お。」

遠くからでも聞こえる水が跳ねる音。そして一つの影がある。

「また制服のまま噴水の中入ってんのか?」

近づいてその人の背中に声をかけた。その人は振り返って俺を見る。

とても嬉しそうな表情をした。

「玲吾、なぜここに?」

「君に会いに来たんだよ。」

「『ほんとう』ですか?」


「…深海。」

「はいー。」

ふわっとした笑顔を浮かべる。

「俺も水浴びしようかな。」

濡れないように裸足になり、ふくらはぎくらいまで裾を捲った。足を入れるとやっぱり冷たい。

「…!玲吾っ!」

「おおお…?!」

深海が思いっきり前から抱きついてきた。受け止めきれず水の中に手をついてしまう。

「俺、濡れないようにしたかったんだけど。」

深海同様全身ずぶ濡れ。何のために捲ったんだよー…

「ふふ、『いっしょ』ですね。」

「そんな嬉しそうな顔すんな。」

頭を人差し指で突ついてやった。

「玲吾と『ぷかぷか』できて、うれしいですー…」

すげぇ破壊力。


「寒い。」

「…!ぼくが、あたためますね…!」

「お、おう。」

ぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。

「深海も冷たくなってるよ。」

風邪引くぞって言っても全然聞こうともしないし。

「それでも…すこしは、あたたまりましたか?」

「…ありがとう。」

「えへへ…玲吾のたのみなら、がんばります!」

深海の頭に手を置いてくしゃっとした。



「深海先輩ー…ってあれ?あんた…」

声のした方へ振り返る。

「…お、さっきぶりだね。」

さっき別れたあの人にまた会った。

prev / back / next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -