▽ 1-3
ずっと一緒にいる。そう約束したけれど、あの頃の私達は子供だった。大人の手なくては、生きていくことができない。
ヒロくんが東京の親戚に引き取られることが決まった。
母からその話を聞いた時は、泣きじゃくったし、家を飛び出してヒロくんのところに行き「行かないで」と懇願して彼を困らせた。
「・・・っ、やだ・・・行かないで・・・っ!」
「・・・ごめんね・・・、なまえ」
「私も一緒に東京行く・・・っ!!」
あの事件の日からうまく言葉を紡げないヒロくんが、小さな声で一生懸命慰めてくれたことを覚えてる。
つくづく私は、優しい彼を困らせてばかりだったな。思い出すと苦笑いが零れそうになる。
時間は止まることなく流れ、ヒロくんが東京に旅立つ日。やっぱり私は泣いていた。
「・・・なまえ、笑って?オレは、なまえの笑った顔が好きだよ」
「・・・っ・・・寂しいもん・・・」
優しく頭を撫でてくれるこの手と離れると思うと、笑えるわけがなかった。
「・・・また、会える・・・から。もっと、もっと強くなって、ちゃんとなまえのこと迎えに来るから・・・」
「・・・っ・・・本当・・・?」
「うん、約束」
差し出された小指に自分の小指を絡めた。
指切ったと小指が離れる。ヒロくんの親戚の人が、車に乗るように彼を促す。私は車が見えなくなるまで手を振った。
彼が好きだと言ってくれた笑顔で。きっと上手く笑えてなんかいなかったけど。
それでも精一杯の笑顔で手を振った。
それが私とヒロくんの最初のさよならだった。
prev /
next