続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 7-3



すぅすぅと小さな寝息が聞こえてきたのは、しばらくしてからのことだった。


甘えた、といっていいのかはわからないが、弱ったところを彼が見せるのは珍しい。


いつも強くてしっかりと前を見すえている彼。けれど人並みに弱さだって抱えてるはず。彼が強く見えるのは、きっとそれを上回る強さを持っているだけのこと。


その弱さを自分の前でさらけ出してくれるのは、それだけ心を許してくれてると思えるからやはり嬉しいと思う。


少しだけ乱れて瞼にかかっている前髪にそっと触れる。


願わくば、この人の心の中が少しでも穏やかでありますように。



ただそう願った。







零くんが寝静まったのを確認し、彼の傍をそっと離れ片付けやお風呂を済ませた。


ソファで寝ようかなとも思ったけれど、やはり彼の様子が気になりベッドの横に腰を下ろした。


彼の寝顔を見ていると私自身にもゆるゆると睡魔が近づいてきた。重くなってくる上瞼が重力に負け、そのまま瞳を閉じた。



どれくらいの時間が経ったんだろう。


しんと静まった夜の闇の中、零くんがガタっと起き上がった気配で目が覚めた。


いつの間にか私もベッドに伏せて寝てしまっていたらしい。



「・・・・・ん・・・、どうしたの?」

寝起きの少しだけかすれた声で尋ねる。


暗闇に目が慣れ、さっきは見えなかった彼の表情が見えてくる。


「・・・・・零くん?」


その表情は先程までの穏やかな寝顔とは違って、顔色が悪く額には少しだけ汗が滲んでいた。


その姿に眠気はどこかに飛んでいき、はっと目が覚める。


熱が上がったのかも、と思い額に手を当ててみるけれどその温度は寝る前よりも低く感じて体調不良が悪化したようには思えなかった。


一体何が・・・・・・。



「・・・・・・なまえ・・・」


私の名前を呼んだ彼の声は少しだけ震えていた。


その姿がどうにもなく危うさを孕んでいるように見えて、そっと彼の背中に腕を回した。


「大丈夫だよ。私はここにいるから。ずっと零くんのそばにいるよ」


そのまま彼の背中をぽんぽんと叩く。


いつも大きなその背中は、私の背中よりも小さく感じた。


そのまま彼は私の肩に頭をことんと預けて、じっとしていた。頼りなく背中に回された手がは、少しだけ震えているようにも感じた。


しんと静まった時の中、口を開いたのは零くんだった。





「・・・・・・夢を見たんだ」


絞り出すように紡がれた言葉。


そっと私の肩から顔を上げた彼と視線が交わる。


いつも凛としている青い瞳は、不安げに揺れていた。

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