▽ 6-2
コナン君の言葉とは反対に、翌日のテレビでは『警察への恨みか?挑戦か?!』などと大々的に昨日の事件が報道されていた。
それもそのはず。
また昨夜、現職の警察官が何者かに殺されたのだ。
連続殺人か・・・などと、コメンテーターが話しているのをソファに座りながら見つめていたそのとき、机に置いていた携帯が振動した。
慌てて携帯の画面を見ると、そこには頭の中を占めていた彼の名前があった。
「・・・・・・っ、もしもし!」
『・・・もしもし?朝早くから悪い。起きてたか?』
久しぶりに聞く彼の声に、胸がぎゅっとなる。
「起きてたから大丈夫だよ。何かあったの?」
『いや、昨日から立て続けに現職の警察官が殺されたってニュースでやってただろ。なまえが気にしてるんじゃないかと思って』
きっと彼は私の心の中なんてお見通しで、喧嘩していてもなおこうやって心配してくれているんだと思うと、その優しさに涙が滲みそうになった。
「ちょっとだけ心配してた・・・。仕事が忙しくなるっていってたし、零くんに何かあったらって思ったら・・・」
『・・・・・・』
「・・・零くん?」
素直な気持ちを伝えるも、彼からの返事はなくて少し不安になり名前を呼ぶ。
『・・・っくそ。やっぱり顔みて話さなきゃ駄目だ。今日の夜少し遅くなるかもしれないがそっちに行ってもいいか?』
少し苛立ったような声色の彼。
「・・・うん、大丈夫だよ」
『ちゃんと会って話そう。じゃなきゃ駄目だ』
また連絡する、と言って彼は電話を切った。
ツーツーという無機質な音が流れる。
ちゃんと会って話そう。たしかにその通りだ。
いつも一人で考え込んで、上手く言葉にできないのは私の悪い癖だ。
今日の夜、彼に会ったらきちんと伝えよう。
こんな決意を胸に、私は再び意識をテレビに向けた。
*
そうだ、手紙でも書こう。
そんなことを思いついたのは、お昼を少し過ぎた頃だった。
きっと今の状態で零くんに会ったら、伝えたいことの半分も言えない気がした私は、引き出しから桜柄の便箋を取りだしペンを握った。
便箋と睨めっこを始めてはや一時間。
結局伝えたいことは、ごめんねとありがとうと好きという気持ちだけ。それをうまく表現できなくて、ペンを片手にうーんっと唸る。
「って、やば!もうこんな時間?美容院行かなきゃいけないのに用意しなきゃ!」
書きかけの手紙を封筒に入れ、机の上に置くと急いで用意を始める。
そう、今日は店長に頼まれた加藤さんのお店のオープニングイベントの日なのだ。
さすがに米花サンプラザホテルということもあり、いつもよりお洒落をしなければと予約した美容院の時間がいつの間にか迫っていた。
前日に用意しておいた服に着替えた私は、慌てて化粧を始めた。
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