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Another side
この日は朝から毛利探偵事務所に来ていた。例の飛行機の緊急着陸の時、毛利さん達が空港にいたということを聞き詳しく話を聞こうとやって来たのだ。
ソファに座りニュース番組を見ているコナン君の後ろで自分もテレビに視線を向ける。
あらかたの話はコナン君が詳しく話してくれた。
テレビでは鈴木次郎吉氏の飛行機が不時着する場面が繰り返し流されていた。
「<ひまわり>のオーナーたちが貸し出しを渋っているようだな」
スポーツ新聞から顔を上げた毛利さんが呟くと、手に手紙のようなものを持った蘭さんがドアを開けて事務所に入ってきた。
「あ、安室さんいらっしゃってたんですね。それにお父さん、まだ出かけてなかったんだ」
「あぁ、メインレースは昼過ぎだからな」
そんな彼の予定を聞いて、呆れたように笑うコナン君を横目に見ながら蘭さんに声をかける。
「お邪魔させていただいてます。それは毛利先生へのお手紙ですか?」
彼女が手に持つ手紙を指刺せば、毛利さんがニヤッと笑みを浮かべた。
「おお!なんだ!ファンレターってやつか!」
蘭さんから手紙を受け取った彼は、笑顔でそれを開ける。
そんな彼を見て小さくため息をついた蘭さんが、俺とコナン君の方へと向き直った。
「コナン君。園子に会議に出ないかって誘われてるんだけど一緒に行かない?よかったら安室さんもどうですか?」
「行きたいんだけど、今日はこれからみんなと美術館に行く約束をしてるんだ。安室さんは?」
今日は特に大きな予定は無い。<ひまわり>
もキッドも気になるし、会議に参加できるならそれに越したことはないだろう。
「僕でよければ是非ご一緒させてください」
「よかった!お父さんは行かないって言うし、コナン君も無理なら心細かったんです」
ほっとした様な笑顔を浮かべた蘭さんがコナン君の向かいのソファへと腰を下ろした。
しばらくすると、事務所のドアが勢いよく開き子供達が入ってきた。そんな彼らに連れられ事務所を出ていくコナン君を蘭さんと共に見送る。
扉が閉まるとほぼ同時、毛利さんが蘭さんの名前を呼んだ。
「蘭!すぐに警察に連絡だ!」
真剣味を帯びたその声に緊張感が走った。
先程の手紙をこちらに見せる彼。そこに描かれていたのは、手書きのキッドマーク。
事務所を出て三階へと上がっていく蘭さん。
「何が書かれていたんですか?」
彼が持っていた四つ折りの紙を覗き込む。
『今夜、<ラ・ベルスーズ>の左、(最初の模写)を頂きに参ります』
見せてくれた手紙に書かれたその文に、毛利さんは悔しそうな声を漏らす。
「キッドめ、まだ諦めてなかったのか」
わなわなと手を震わせる彼を横目に、腕を組み思考を巡らせる。
「・・・・・<ラ・ベルスーズ>の左・・・・・・(最初の模写)・・・・・・<ラ・ベルスーズ>・・・・<ゆりかごを揺らす女>か・・・・・・」
小さくメッセージに書かれていた言葉を繰り返す。
違う。キッドの狙いはあの<ひまわり>じゃない。
三幅対の左、つまり五枚目の<ひまわり>だ。
「とにかく鈴木邸に行くぞ!そこにみんな集まっているはずだ」
毛利さんは俺に声をかけながら立ち上がる。
「はい、車回してきますね」
「頼む!」
ポケットから鍵を取り出しながら事務所を出る。
キッドの狙いはなんなんだ。
確か五枚目の<ひまわり>は日本にあったはず。先にそちらに盗むということなのか。
それにしても何故奴はここまで<ひまわり>に拘るんだ。
繋がらない点と点にもどかしさを感じながら、駐車場へと向かった。
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