▽ 8-4
ツインタワーに着き車を停め降りる。
目の前にそびえ立つ二つのビル。二つの連絡橋で繋がれたそのビルは間近で見ると想像を遥かに超える高さだ。
「すごい・・・」
ビルを見上げながら思わずそんな声が漏れた。
「ちょっと毛利さんの所へ行ってくるよ」
車から降りた零くんが、少し離れた場所に車を停めた毛利さんの方へと向かう。
そんな彼と入れ違いに、何やらにやけ顔の園子ちゃんがこちらにやって来る。
「なまえさん、見ちゃいましたよー」
ニヤリと笑いながら私の腕を引いたのは園子ちゃん。
蘭ちゃんは少しだけ顔を赤らめている。
「な、なにを?」
まさかな、なんて思いながら彼女達に尋ねる。
「さっきの信号待ちの時ですよ!もう!ラブラブじゃないですか!」
園子ちゃんの言葉に、一度は元に戻った頬に再び熱が集まる。
「・・・っ、それは・・・!」
「いいなぁー、私もあんな風に想ってくれる相手が欲しい」
「もう、園子!そんなことばっかり言ってると京極さんに怒られるよ」
真っ赤になった私と、それを揶揄う園子ちゃん。そしてそれを諌める蘭ちゃん。
「お前達、騒いでないで行くぞー」
キャッキャと騒ぐ私達に、毛利さんが声をかける。
「っ、はい!」
弾かれたように返事をする私を見て園子ちゃん達は小さく笑った。
「あ、ちなみにおじ様は運転してて見てないから安心してくださいね」
ポンっと私の肩を叩く園子ちゃん。
「ホントに勘弁して・・・、恥ずかしい」
トホホと肩をすぼめるのは私の番だった。
*
「あれ?蘭姉ちゃん?どうしたの?」
ツインタワーのエントランスで担当の人を待っていると、見知った顔が近づいてきた。
コナン君をはじめとした少年探偵団の皆と阿笠博士だ。
「コラっ!なんでお前達がここにいる?!」
毛利さんがコナン君を指差す。
「キャンプの帰りにこのビルを見に寄ったんだよ。おじさん達は?」
そういえばこの子達、よくキャンプに行っていたっけ。
そんなことを考えている私の隣で、毛利さんや蘭ちゃんが今日のことを子供達に説明していた。
「へぇ、それで安室さん達も一緒に来たんだね」
コナン君が可愛らしい笑顔でこちらを見る。
そんな話をしていると、スーツ姿の若い女性がビルの中から出てきてこちらにやって来る。
「失礼ですが、毛利小五郎様でしょうか?」
「はい」
「私、常磐の秘書の沢口と申します。ただ今、常磐は接客中でして先にショールームの方をご案内します」
私達の方を向いて一礼すると、彼女は正面玄関から一階ホールへと入っていく。
「こちらのA棟は全館オフィス棟で、三十一階から上は全てTOKIWAが占めております。ショールームは二階と三階にございます」
吹き抜けになった広いホールを進み、エスカレーターを上がっていく。
毛利さんに続いてエスカレーターに乗った子供達は、TOKIWAの扱うパソコンソフトやゲームに興味津々のようだ。
ショールームの中に入ると、そこには様々な種類のゲーム機が置かれていた。
ゲームセンターで見かける対戦ゲームはもちろん、宇宙飛行士の訓練で使われるような体験型のゲームもある。
近未来を感じさせるそれは、子供達の好奇心を刺激するには十分だった。
「すげぇー!」
「面白そうなゲームがいっぱい!」
興味深そうにフロアを走り回る子供達。
「やぁ皆さん、いらっしゃい」
そんな彼らにスーツ姿の男性がニコニコとしながら近付いてくる。
「うちの専属プログラマーの原です」
沢口さんが彼の事を私達に紹介してくれる。
メガネ越しに見える優しげなつぶらな瞳とその笑顔は、専務なのにどこか人懐っこい印象を与えてくれる。
「これ何だろ?」
「やってみるかい?」
子供達が二台並んだ大きな機会の前でモニターを覗き込んでいると、原さんが彼らに声をかける。
「これはね、コンピュータが十年後の顔を予想してくれるんだ」
原さんの説明に阿笠博士が「ほぉー」と物珍しそうに機械を見つめた。
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