▽ 1-2
「・・・・・・謝らなくていい。」
ごめんなさいと繰り返す私の言葉を遮る彼。
「謝らなくていいから。伝えたいことがあるなら、さっさとその人のこと追いかけた方がいいんじゃないのか?」
「・・・・・・」
「俺のことは気にしなくていいよ。こうなるかもしれないってわかってたし」
口元に小さく笑みを浮かべながら、ぽんぽんと私を頭を撫でる。
私はこんな優しい人を傷付けたんだ・・・・・・。もっと早く自分の気持ちに気付いていれば・・・。
「俺はなまえよりもっといい子見つけるよ。後で後悔するなよ?
だからなまえも頑張れ。ちゃんと話しておいで」
茶化したようにそう言う彼に、涙がまたこぼれる。
「もういいから、行っておいで」
「・・・本当に・・・っ、ごめん・・・なさい!」
私は彼に頭を下げると、控え室を飛び出した。
涙で顔がぐちゃぐちゃなことも、自分が今ドレス姿なことも、すれ違った人たちが私を不思議そうな顔でみていることも、全て忘れて走り出していた。
*
教会を出たあと、特に行く宛もなかった俺は近くの公園のベンチに腰掛けていた。
(ここからでもチャペルが見えるんだな)
公園の木々の向こうに白く輝く教会が見える。
今頃あそこでなまえは永遠の愛を誓っているんだろう。そう思うと胸がチクリと痛む。
(どこまでも勝手だな・・・俺は)
キラキラと輝く教会や、澄み渡るような青空から目をそらしたくて思わず下を向く。
「・・・・・・零!!!」
(・・・・・・え?)
ずっと聞きたかった声に弾かれたように顔を上げる。
「・・・・・・なまえ・・・」
目の前にいたのは、真っ白なドレスを着たなまえだった。
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