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▽ 過去拍手SS



※ もし出会わなければ の番外編SSです。17話後のお話なので未読の方はご注意ください。





待ち合わせに遅れてきた降谷さんは、車に乗ってからも何度も繰り返し私に謝っていた。

マンションの前に着いてからも、彼は何度目かわからない謝罪の言葉を口にする。


「本当に今日はすまなかった・・・」
「・・・・・・もう!さっきから謝りすぎです!次謝ったら怒りますよ?」
「・・・・・あんなに待たせたんだ。それに今日を楽しみにしてたのも知ってる。そりゃ謝りたくもなるさ」
「さっきも言いましたけど、私は来てくれただけで嬉しいんです。だからそうやって謝られると悲しくなります」


確かに楽しみにしていたことは事実だ。私だって人並みには、彼氏と過ごすクリスマスってものに憧れはある。


それでも降谷さんの状況や立場は、理解しているつもりだ。そんな彼が走って私の元へ来てくれたのだ。

それだけで嬉しくないはずがない。どうしてその気持ちが目の前の彼に伝わらないのか・・・・・・、それにもどかしさすら覚える。


私はいつかの彼がしたように、降谷さんの頬をぎゅっとつまむ。


「・・・・・・っ・・・」
「いつまでそんな顔をしてるんですか?せっかく会えたんだから、降谷さんには笑っててほしいです」
「・・・・・・・・」

わざとらしく眉間に皺を寄せて睨むと、降谷さんの眉が下がる。私は頬をつまんでいた手をそっと離すと、僅かに赤くなった頬をさする。


「次謝ったらもっと強くつねりますよ?」
「・・・・・・ああ、わかった。もう言わないよ」

そう言ってやっと笑ってくれた降谷さん。


「来年のクリスマスは絶対に一緒に過ごそう」
「来年・・・?」
「あぁ。イルミネーションでもなんでも付き合うよ」


降谷さんが来年の約束をするということに、私は驚きを隠せなかった。この人は、そういう未来の・・・・・・、不確定な約束はしない人だと思っていた。


思わずぽかんとした私に、降谷さんは首を傾げる。


「何でそんなに驚いてるんだ?」
「来年の約束をすることにびっくりしました」

思ったままを口にすれば、彼の表情が僅かに曇る。


「来年は一緒いないつもりだったのか?」


あぁ、もしかしてこれは誤解させてしまったのかもしれない・・・。言葉足らずな少し前の自分を恨む。


「・・・っ、違いますよ!そういう意味じゃないです」
「じゃあ一体どういう・・・」
「降谷さんはそういう未来の不確定な約束はしない人だと思ってたから・・・。だからびっくりしただけです」
「・・・そういう事か」


狭い車内の中で、私の体はそっと降谷さんの方へと引き寄せらせる。あっという間に彼の腕の中にすっぽりとおさまった私。先程までの寒さが嘘のように、その腕の中は温かく居心地がいい。


「確かに他の奴が相手ならこんな約束はしない。未来なんてどうなっているかわからないからな」
「・・・・・・」
「けどお前は別だ。来年も再来年も、ずっとそばにいて欲しいと思ってる。だから自然に来年って口にしていた」


意識せずに彼が零した未来の約束。

どれほど貴重で大切なものなのか・・・、それを考えると胸がぎゅっと締め付けられる。


「・・・・・・来年は遊園地のイルミネーションが見たいです」
「あぁ、わかった」
「帰りにどこか美味しいお店でご飯も食べたいです」
「気に入りそうな所を調べておくよ」
「・・・・・・来年はずっと一緒にいて欲しいです」
「・・・・・・約束する」


彼が素直に語ってくれたおかげで、私もすんなりと言葉がでてきた。


願わくば、来年も再来年もこれからもずっと・・・・・・、


優しすぎるこの人の隣にいられますように。



May your Christmas wishes come true!



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