もし出会わなければ | ナノ
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▽ 8-1



───・・・とある日曜日の夕方。


仕事を終え家に帰り、さぼり気味だった部屋の掃除をしていると携帯が鳴り1通のメッセージが届く。


[今日ってお時間ありますか?]


差出人は数日前に、ポアロで別れたきりになっていた安室さんだ。


珍しい・・・。
あの火傷のとき以来、彼がこんな風に私にメッセージを送ってくるなんて初めてのことだ。


なんて返すべきか・・・、しばらく携帯を持ったまま部屋の中をうろうろとする。


特に今日は予定もないし、断る理由も特にない。それになにより、あんな風に店を出たことを一言謝らなければ・・・。


別れ際の安室さんの謝罪を、曖昧に受け流してしまったことを思いだすと申し訳なさがこみ上げる。


[大丈夫ですよ。何時頃ですか?]


返事を打ち送信のボタンを押して、ふぅっとため息をつく。


このあと安室さんに会うなら早く掃除終わらせないと・・・、私は机の上に置いたままになっていた掃除用具を再び手に取った。





待ち合わせ場所に指定されたカフェに着くと、まだ約束の時間の10分前だというのに電柱にもたれて携帯を触る安室さんの姿があった。


なんというか・・・・・立ってるだけで絵になる人だな・・・。

決して目立つ服装をしているわけではないけれど、その存在感からか人目を引く彼に思わず目を奪われる。


「あ、なまえさん!」

そんな私に気付いた安室さんがこちらに向かってくる。


「今日は急に呼び出してしまってすいません」
「予定もなかったので大丈夫ですよ。こちらこそお待たせしてしまってごめんなさい」
「僕もさっき来たばかりですよ。じゃあ行きましょうか」


そう言いながらお店の扉を開けて私を待っていてくれる彼。


うう、お店の中の女性客の視線が痛い・・・。

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