もし出会わなければ | ナノ
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▽ 7-3



「あのね、ここに連れて行ってもらいたいなって!」

そう言いながら歩美ちゃんが、ポケットからチラシのようなものを取り出す。


「これは隣町のホテルバイキングですか?」

チラシを覗き込みながら昴さんが尋ねる。


「そうなんですよ。せっかく博士が懸賞で当てたのに、この日はどうしても行けないって言うんです」
「食い放題なのにもったいないだろ?」
「だから昴さんに連れて行ってもらえないか聞いてみようってコナンくんが!」

そうだよね!と歩美ちゃんが隣に座るコナンくんを見る。


やっぱりこんな時間に彼らがここに来たのは、この小さな名探偵の差し金らしい。


昨日のあんな姿を見られたんじゃ勘繰られても仕方ないか・・・、そんなことを考えながら彼らの会話を見守る。


「いいですよ、その日は予定もないですし」
「すまんの、昴君」
「大丈夫ですよ、僕も気晴らしになりますし」
「やったー!これでバイキング行けるぜ」
「良かったですね、元太君!」


盛り上がっている彼らに視線を奪われていると、足元で ねぇ、と呼ぶ声がして下を見るとそこにはコナン君の姿があった。


「お姉さんも一緒に行かない?昴さんとお友達なんだよね?」


にっこりと笑顔でそう言ってくる彼はとても可愛い。一瞬絆されそうになるけれど私は彼のその笑顔の裏側を知ってしまっている。


きっと昴さんとの関係を疑ってるんだろうな・・・。

彼がすんなり先程のお友達発言を信じてくれたとは到底思えない。


「えーっと・・・・・・ごめんね?ちょっとその日は用事があるんだよね」
「お仕事とか?」
「うん、そうなの。昼からお仕事が入ってるの、ごめんね」
「ううん、なら仕方ないね!」


誘いを断ると、またみんなの元へと戻っていくコナン君の後ろ姿を見つめる。


いつかあの名探偵にはバレてしまいそうだな・・・、そんなことを考えつつもあの理論的な彼が、私の突拍子もない話を信じるとは思えない。


さてどうしたものか・・・。
まぁでもここまできたら、なるようになるでしょ・・・。

既に必要以上に彼らに関わってしまっている私は、半ば諦めに似たような気持ちで楽しそうにバイキングについて盛り上がる彼らを見つめていた。

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