番外編 君ありて | ナノ
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▽ 1-1



※ 夢主以外の女の子sideのお話なので苦手な方はご注意ください。他の短編と時系列的に少し矛盾があるかもしれないのでご了承ください。



ご報告があります。


私、彼氏ができました!!!







「おめでと!!!バイト先の人だっけ?」
「うん。ずっとカッコいいなぁって思ってて、この前飲み会終わりに告白されたんだよね」


ある日のカフェ。
向かいの席でレモンティーを飲むなまえに報告すると、彼女は大きな瞳をくしゃりと細めて笑って祝福してくれる。


それが少しだけ照れくさくて、くるくるとストローで氷を掻き回す。



「あ!そうだ!じゃあ来週の日曜日、一緒にトロピカルランド行かない?」
「トロピカルランド?」


何かを思い出したように、なまえはパン!っと手を叩く。


どうやら萩原先輩とトロピカルランドに行く約束をしているらしい。たまたまショッピングモールの福引で4人分のチケットを当てて、一緒に行ける人を探していたんだと言葉を続けた。


「あ、でも付き合ったばっかりだし4人より2人きりの方がいっか」
「ううん、それならせっかくだし4人で行こうよ!彼にも聞いてみる!」
「ホント?!わーい!楽しみ!」


ニコニコと笑うなまえは、出会った頃の近寄り難さが嘘みたいに可愛くて。

きっと萩原先輩のおかげも大きいんだろうなぁ、なんて思わずにはいられなかった。






日曜日。
天候にも恵まれ、雲ひとつない青空が頭上に広がっていた。


私の大学で1番仲良い友達からの誘いと言うと、彼は二つ返事で誘いに頷いてくれた。


私と彼の最寄り駅まで車で迎えに来てくれる約束になっていたので、駅前のベンチで彼と並び座りながらなまえ達を待つ。



「今日付き合ってくれてありがとね」
「俺も……の友達には会ってみたかったから気にしなくていいよ。なまえちゃんっていつも話してる子だろ?」
「うん!なまえもその彼氏もすごくいい人だから!」
「彼氏って警察官なんだっけ?なんか怖そうなイメージ」
「ははっ、萩原先輩は怖くないから大丈夫だよ」


高校の頃の2人の話を思い出しながら、彼と話していると目の前に1台の車が止まる。


運転席の窓が開き助手席から私の名前を呼びひらひらと手を振るなまえ。


「おはよ!」
「2人とも待たせてごめんね。後ろ乗っちゃって」


後部座席に乗った私達。
思えばこうして彼と遠出することも、ダブルデートも初めてで。そんなことを考えていると自然と頬が緩む。


簡単にお互い自己紹介をして、トロピカルランドまでのドライブを楽しむ。


最初は萩原先輩に緊張していた彼も、気さくに話しかけてくれる萩原先輩に心を許したようで楽しげに笑う声が車内に響いていた。



あっという間に車はトロピカルランドに到着した。



「なまえ、マフラーは?」
「今日暖かいし置いていく!荷物になるの嫌だし」
「ちゃんと上着は着とけよ、風邪ひくから」


なまえはそんな萩原先輩の言葉に頷きながら早く行こうと彼の腕を引く。2人のやり取りを横目で見ていると、隣にいた彼がくすりと笑う。


「どうしたの?」
「いや、……の話で聞いてたなまえちゃんって大人びた感じの子かなと思ってたんだけど、イメージと違うなって。・・・・・・っ、悪い意味じゃなくてな!」
「ふふっ、たしかに。萩原先輩といるときのなまえは、いつもより可愛いかも」


何となく彼の言いたいことが分かった私は、つられてくすりと笑う。


多分あれが本来の彼女の姿なんだろう。


楽しげに笑うなまえを見る萩原先輩の目は今日も優しくて。やっぱり2人に憧れずにはいられなかった。





なまえと萩原先輩のことは高校の頃から知っていた。


それでもこうして長く2人と一緒にいる機会はそんなになくて。なんだか新鮮な気持ちになる。



日曜日ということもあり、人が多い園内。アトラクションに並んでいる間も、萩原先輩はさりげなくなまえが人にぶつからないように庇っていて。


なまえはそんな萩原先輩を見上げながら「ありがとう」と笑う。


お昼を少し過ぎた頃。

食事をとる為にレストランに入る。


ピークの時間を避けたこともあり、すんなりと店内に入ることができ通された席に座る。


席に着くと萩原先輩と彼はお手洗いに向かい、その間に私となまえはメニューを覗く。



「トロッピーのオムライスとかあるんだ!可愛い!」
「ホントだ!でもカレーもあるよ!パスタも捨てがたい・・・」


さすがテーマパーク。
マスコットキャラクターのトロッピーをモチーフにした可愛いメニュー達に私となまえのテンションは上がる。


最後までトロッピーのカレーかオムライスでぶつぶつ悩んでいたなまえだったけど、どうやらオムライスに決めたらしい。

普段大人びてるのに、意外と可愛いキャラクターものに弱いなまえにくすりと笑みがこぼれた。


しばらくすると萩原先輩と彼が戻ってきて、それぞれの隣に座りメニューを見る。


「俺はハンバーガープレートにしよっかな。……は決めた?」
「うん!私はパスタのセットにする」


私達のメニューが決まると、萩原先輩が手をあげて店員さんを呼ぶ。


「パスタのセットとハンバーガープレートで。なまえちゃん達は?」

彼が私の分も纏めて注文をすませ、なまえ達に視線を向ける。


「私はこのオムライスで。研ちゃんは?」
「んー、じゃあ俺はカレーにしよっかな」


萩原先輩が指さしたのは、さっきまでなまえが悩んでいたカレー。彼が選ぶには可愛すぎるその選択。

注文を聞き終えた店員さんは、小さく頭を下げるとカウンターへと戻っていく。



「研ちゃんトロッピー好きだったっけ?」
「んー?うん、可愛いなぁって思ってさ♪」
「・・・・・・私がカレーかオムライスで悩んでたのバレてた?」
「ははっ、何となくな。でもちょうどカレー食いたかったから」


ジト目で萩原先輩を見上げるなまえと、そんな彼女を見て小さく笑い頭を撫でる萩原先輩。


優しいなぁ、なんて感心していた私の隣で、彼が口を開く。


「2人って幼馴染みなんですよね?ずっと一緒にいてそれだけ仲良いってすごいっすね」

その言葉に滲むのは私と同じ感情なんだろう。それは純粋にすごいなって羨む気持ち。


2人を近くで見ていた私もずっとそれは思っていたから。



「何年一緒にいても毎日惚れ直してるからね」

そう言って柔らかく笑う萩原先輩と、その言葉に頬を染めるなまえ。


そんなことを話していると、頼んでいた料理達がテーブルに運ばれてくる。



「よし!食べよっか」
「いただきまーす!」


それぞれテーブルに運ばれてきた料理に手をつける。

カレーとオムライスを並べてニコニコしながら写真を撮るなまえを見る萩原先輩を見ていると、さっきの彼の言葉が大袈裟なんかじゃない事がひしひしと伝わってきた。



食事を終え外に出ると、少しだけ太陽が傾いていて吹き抜ける風が体をすっと冷やしていく。


「なまえ」
「何?」
「風邪ひくからこれ巻いとけ」
「研ちゃん寒くないの?」
「なまえよりは鍛えてるから大丈夫だよ。ほら、こっち来い」


少し前で自分のしていたマフラーを外すと、なまえの首元にぐるぐると巻き付ける萩原先輩。


そんな彼らを見ていた私に、彼が耳を寄せた。



「なんか……があの2人に憧れる気持ち、ちょっとだけ分かった気がするよ」
「ふふっ、でしょ?」
「あぁ。あんな風に何年経っても一緒に笑っていられたらいいな」


そう言って笑うとくしゃりと私の頭を撫でてくれる彼。そのまま私の手をとると、自分のコートのポケットに入れてくれる。


その温もりにふっと頬が緩んだ。



「……!観覧車乗りに行こ!」

こちらを振り返りながらそう言ったなまえの腕はしっかりと萩原先輩の腕に絡んでいて。



その後ろでキラキラと輝く沈みかけたオレンジ色の夕陽の眩しさに、思わず目を細めて笑った。




────────────────



「ねぇ、研ちゃん」
「ん?どした?」


それぞれ別れて乗った観覧車。

隣に座ったなまえが上目遣いで俺を見る。



「さっき言ってたの、ホント?」
「さっき?」
「毎日惚れ直してるってやつ」

自分で言ってて照れくさくなったのか、なまえの頬が赤く染まる。


ごにょごにょと小さくなっていく語尾に思わずふっと笑みがこぼれた。


「うん、ホント。寝起きのボサボサな頭で欠伸してるとことか、口開けて寝てるとことか、いつ見ても可愛いなって思ってるよ」
「っ、!何それ!嘘?!」


ふざけてそう言うと、慌てて両手でぱっと口を塞ぐなまえ。さっきとは違う意味でその顔が赤くなる。


「なんてな、冗談だよ。・・・・・・でも惚れ直してるのはホント」




研ちゃん


そう言って笑いかけてくれるなまえが隣にいてくれる。

俺のことを好きだと言ってくれる。


それだけで俺の世界に色がつく。


それくらいお前は俺にとって特別だから。



「・・・・・・私も、」
「ん?」
「私も毎日惚れ直してるよ?朝起きて隣に研ちゃんがいてくれるのが、すごく幸せなの」


照れくさそうに笑うその仕草がたまらなく可愛くて。同じくらい愛おしい。


きっと君への気持ちは尽きることなんてないんだろう。


2人きりのゴンドラの中。
沈みかけた太陽を見ながらそんなことを思った。


Fin


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