▽ 1-4
独占欲。そして子供みたいな嫉妬心。
研ちゃんは私の頭を撫でながらケラケラと笑っていて。
「似てたから」
「・・・・・・え?」
笑うのをやめた研ちゃんが私の瞳の縁に溜まっていた涙を拭いながら言葉を続ける。
真っ直ぐに私を見る瞳に滲むのは優しさと愛情。
「あの子の見た目がちょっとだけなまえに似てたから。だから×××の中ならあの子が可愛いって言っただけ。別に好きとかじゃないよ」
「っ、似てなんか・・・」
「うん。全然似てない。今日会ってみて思った」
相手はキラキラとした世界の住人で。
女の私から見ても綺麗だと思う。
それでも研ちゃんの言葉に少なからず傷付く自分がいて。
そんな私の心の中を見透かすように、研ちゃんは私の腕を引いた。
「なまえの方が可愛い。他の奴らにはどう見えてんのか分かんねぇけど、俺から見たらなまえより可愛い奴はいないし好きなのもお前だけだから」
「・・・っ、研ちゃん・・・」
「だから変な心配すんな、お姫様♪」
蓋を開けてみたら私の早とちりでしかなくて。
研ちゃんは私の真っ黒い感情をすくい上げて真っ直ぐに向き合ってくれる。
「っ、ごめん・・・なさい・・・」
「謝ることなんかないし。可愛いヤキモチなら大歓迎」
「・・・っ、けんちゃ・・・ん・・・、好き・・・」
「ははっ、なまえが好きなら俺は大好きかなぁ」
いつも底なしの優しさで全てを受け止めてくれるから。
ぼろぼろと涙を流す私を見て笑う研ちゃん。しっかりと背中に回された手が解けることがないように。
2人きりの部屋でそんなことを願った。
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「芸能人にまで妬くか?普通」
「可愛いだろ、そういうとこも」
「アイツって自分に自信があるのかないのか分かんねェよな」
贔屓目なしに見てもなまえは可愛い。学生時代からアイツだってそれは分かっていたはず。
それでもこうして小さなことで不安になるんだから、女心ってのはよく分からない。
だいたい萩がなまえ以外の女に惚れるなんてあるわけない。溺愛もいいところだというのに。
まぁそれは逆も言えるか。
なんだかんだ似たもの同士の幼馴染み達。
煙草片手になまえにメッセージを打つ萩を横目で見ながら、思わずふっと笑みがこぼれた。
Fin
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