君がいない隣 | ナノ
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▽ 苛立つ心



「たまには何か手の込んだものでも作るか・・・・・・」


ひとり車を走らせながら呟いた後、ここ数日で独り言が増えたことに気付く。


今までも俺はそうだったんだろうか?


そこまで考えてはたと気付く。


・・・・・・今まではなまえが隣で相槌を打っていたんだ。


俺が話しかければいつでも答えてくれた。

独り言のように呟いた言葉にも彼女は反応を返してくれていた。


「あれから一週間か・・・・・・」


もう一週間なのか、
まだ一週間なのか・・・。





そんなことを考えながらやってきたのは、車を少し走らせた場所にある大型スーパー。


何を買うかなんて決まっていない俺は、目についたものを次々に買い物カゴへと放り込んでいく。


「・・・・・・です・・・ね!」
「・・・・・・い・・・すよ」


ふと耳に入ってきた男女の声。


聞き間違えるはずがない。


───・・・・・・なまえの声だ。


思わず人気のない商品棚の影に隠れる。


「やっぱりオムライスはデミグラスソースですよ!トマトソースはまた今度ってことで」
「なまえさんの好きなものでいいですよ」
「わーい!ありがとうございます」


ニコニコと笑顔で隣の男に話しかけるのは、数日前まで俺の隣にいた彼女。


そんな彼女が今笑顔を向けているのは・・・・・・


「なんで沖矢昴と一緒にいるんだ・・・」


今日もあの日と同じくハイネックを着たあの男。

なまえと奴にどういう接点があるのかはわからない。


「あ、昴さん!これもいいですか?」
「かまいませんよ。お付き合いします」


両手に酒の缶を持ったなまえが沖矢昴に駆け寄る。

それを笑顔で受け入れる奴の姿に苛立ちを覚える。


なんであいつに笑いかけているんだ。

彼女が笑いかけるのは、いつだって俺だったはず・・・・・・。


・・・・・・ああ、そうか。

俺と彼女はもう他人なんだ。


なまえがどこで誰と何をしていても、俺には口を出す権利なんかない。


「・・・・・・っ、くそ!」


楽しげに話しながら去っていく二人の姿を見つめながら、俺は何もすることが出来なかった。

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