君がいない隣 | ナノ
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▽ 面影を探して



珍しく何の予定もない休日。
こんな日は滅多にない。


なまえが隣にいれば出かける予定でも立てたんだろうか。

あいにく一人でどこかに行くような気分にはなれない。


「悪い、今度の休みなんだけど・・・・・・」
「仕事?気にしなくて大丈夫だよ!私もちょうど友達にご飯誘われてたの」
「そっか。また埋め合わせするから」
「楽しみにしてるね!お仕事頑張って!」


そういえば埋め合わせなんてしていなかった。


今更ながらそんなことが頭によぎる。


あの日俺は、なまえがずっと前から行ってみたいと言っていた夜景に連れていく約束をしていた。


ところが組織からの急な呼び出しで結局直前に断ったんだ。


何日も前から楽しみだと言っていた彼女は、文句ひとつ言わず俺を送り出してくれた。


あの時言っていた友達との約束は、本当だったんだろうか・・・・・・、なんて考えてみても答えをくれる彼女はもういない。


思い返してみれば、なまえとの約束は破ってばかりだったな。


彼女は一度として怒ることも、泣くこともなかった。

ただいつも笑って、

「大丈夫だよ」

そう言ってくれていた。





家にいても何故かなまえのことを考えてしまう。


「・・・・・・出かけるか」


行くあてなんて特になかった。


この家じゃなければどこでもいい。


なまえの面影を探さなくていい場所なら・・・・・・。

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