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▽ Trashy world



「いつもどこに行ってるんだ?」

いつものように公園へと向かおう靴を履いていると、ビールの缶を持ったままの叔父に呼び止められる。


そういえば叔母は子供と一緒に朝から出かけてるんだっけ・・・・・・、そんなことを考えながら叔父から目をそらす。


「・・・チッ、無視かよ。可愛げのない奴だよな」


今更この人に愛想を振りまくことに、何の意味があるというんだろう。馬鹿馬鹿しい。

私にとってこの家の人間は嫌悪の対象でしかなかった。


「なぁ、なまえ・・・・・・男でもできたか?」
「・・・っ!何?!」

立ち上がったと同時に、腕を思いっきり掴まれ酒の臭いを纏った彼の顔が数センチの距離に迫る。


「いい女になったよな、お前」
「離して!」
「あいつはハーフだなんだって文句言ってるが、俺は嫌いじゃないぞ」


気持ち悪い・・・
気持ち悪い・・・
気持ち悪い・・・


酒の臭いも、彼の浮かべる卑猥な笑みも、腕を掴む手も、目の前のこの人の全てが気持ち悪い。



━━━・・・

━━━━・・・・・・

━━━━━━━・・・・・・



地獄のような時間だった。

自分の中で何かが音を立てて崩れていくような気がした。


泣いても、叫んでも、誰も助けてくれない。


「・・・・・・っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

私の上で荒い息を吐くこの男を殺してやりたいと思った。

「なまえ・・・・・・っ・・・」


その声で名前を呼ばないで。
触らないで・・・。


現実を見たくなくて目を閉じる。

暗闇の中で思い出すのは両親の顔、そして今も私のことを待っていてくれるかもしれない彼のことだった。


なんでこうなったの・・・・・・。


なんの力も持たない私は、ただ時間が過ぎるのを待つしかなかった。





気が付くと窓から見える景色は真っ暗だった。


「あいつには言うなよ?」

服を着ながら部屋を出ていく男の背中を見つめる。


やっと終わった・・・・・・。


ズキズキと痛む下半身が、先程までの時間が夢じゃなかったことを私に教えてくれた。


このまま生きてる意味ってあるのかな。


ふと視線を横に向けると、机の上に置かれた鋏に目が止まる。

重たい身体を起こし、ゆっくりとその鋏を手にとり手首にあてる。

力いっぱい鋏を押し付け、横に引くと痛みとともにすっと赤い線が入る。


「・・・・・・痛い・・・」


涙が流れた。
身体の痛みか、心の痛みか。


もう何もかもどうでもいい。

疲れたよ・・・・・・、お父さん、お母さん。


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