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昼下がり。
明日受けるクエストの事でパワポケからの伝言を預かったトレロはそれを伝えるべくヒナの部屋を訪れていた。
妙に緊張する心を抑える為一度大きく深呼吸をするとコンコンと軽く扉をノックした。



「ヒナ、居るか?オレだ、トレロ。」
「はーい。開いてるから入って。今手が離せなくて。」



部屋の主から入室の許可が出たものの、女性の部屋に入るのはやはり逡巡してしまうものでトレロは唾を飲むとゆっくりと遠慮がちに扉を開いた。





「………何してるんだ?」





部屋に踏み込んだトレロの目に最初に映ったのは、小さめの脚立に乗り背伸びをしたヒナが唸りながら必死に手を伸ばしている滑稽な姿だった。



「あ、この棚の上の箱を取りたくって。」
「届かないのか。オレが取ろうか?」
「いや多分ジャンプしたら届くかな。…よっと……取れた!」



渾身の力で跳び上がるとヒナの両手は見事箱の側面を押さえ棚から降ろすことに成功した……ように見えた。



「危ないっ!」
「えっ、きゃあっ!」



勢い良く跳び過ぎたせいか着地地点がズレてしまいヒナは脚立から足を踏み外し箱を持ったまま床へと投げ出される。
トレロは急いで駆け寄ってヒナと床の間に間一髪で滑り込み身を呈して彼女を庇った。



「イタタタタ。」
「…っつ……無事か?」
「トレロさん、私を庇って…ご、ゴメンなさい!」



実際は脚立から落ちたヒナを下敷きになってまで庇ったというカッコイイシーンなのだが、端から見るとヒナが自分を押し倒しているように見えないこともないこの状況を誰かに見られるとまずい…それより何より自分の中の何かが爆発しそうな気がしたトレロは取りあえず上から降りるよう促そうとした正にその時だった。





−−コンコン…ガチャ



「入りますよ、ヒナ。今から買い出しをおねが……………お楽しみの途中失礼いたしました。出直してくるとします。」



間の悪いところにヒナを訪ねて来たのはよりにもよってフランシスだ。
彼は二人を見るや否や何を勘違いしたのかそう言ってパタンと扉を閉めてしまった。
フランシスが去った数秒後、その意味を理解した二人は顔を見合わせて同時に真っ赤に染まった。



この後、ヒナはフランシスの誤解を解く為必死に彼を追いかけ、トレロはヒナの部屋で顔を赤くしたまま暫く座り込んでいたそうな……。





(ヒナもとうとうあんな事を覚えましたか…寂しいものですね。)
(フフフフランシス様!!違います!誤解ですっ!誤解ですってばーっ!)

(オイシイ思いした……かも。)





end...


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