A+ナナシ ごめん、と聞こえたのはきっと気のせいではない。 反射的につむった目を開けると、滔々と流れる血が見え、手を這う生ぬるい感触に身震いした。 いや、なんで。理解できないですよ。意味のない発言を繰り返しながら私を傷つけようとしたのだろうシラサキと、私を庇ったのだろうAを交互に見た。 イミテーションに操られたとはいえ、私を刺そうとした結果Aに刃を向けたシラサキの複雑な顔をどうにかしたいけれど。……抱きしめられちゃ無理な話。 「あんた、」 意図を知りたかった。彼は寂しそうに微笑んだ。 「シラサキもあんたも、かなしませたくなかった」 「あんたがこんな、なってたら、そんなの」 「シラサキが……さしたじじつ、のこしたくなか、った」 重みが増す。 「おい、A――」 「わすれても、なかったことに……できないだろ」 ※ 「……おはよう」 「あんた、なんで私のとこで寝てるですか」 ああ、言い飽きたセリフ。 [前][目次][次][小説TOP][TOP] [しおりを挟む][感想フォーム][いいね!] |