ウタモニ 「なにをするの」 ほんの少しの焦燥が含まれた私の声に、だらりと腕を下ろしたまま、彼は微笑んだ。 「早く鍵を」 「渡すわけないだろ?」 「どうして? こんなことしている時間はないわ。早くしないと更なる収容違反が――」 「もう、そんなのしなくていいんだよ」 じゃら、と金属音が鳴る。私の足につけられた足枷に、ぐ、と眉を顰めた。 目の前のウタもまた悲痛な表情を浮かべる。 「シラサキもお前も諦めない人間なのは知ってるさ。そういう人間相手にはこうするしかないんだよ」 「そうね、身動きをとれなくしてしまえばなにもできなくなるわ」 「そうだ、そうだよ――だから諦めてくれよ。このまま三人で過ごしてくれ……」 [前][目次][次][小説TOP][TOP] [しおりを挟む][感想フォーム][いいね!] |