Patriot 36
長い間宝物庫で眠っていた魔法の鏡は魔力を失っており、このままではとても遺跡の闇を照らすことはできない。そこで彼らは泉の近くの一軒家に住むという魔術師に知恵を借りることにした。 その泉は不思議な逸話があり、湧き水を飲めばどんな呪いも浄化されるのだという。魔術師に言われるまま、ミーティア姫が水を口に含むと何ということだろう。以前の美しい姿になった。 しかし喜べたのもつかの間だった。まるで泡沫の夢を見ていたがごとく、姫の姿は馬の姿に戻ってしまう。どうやら泉の力でも完全に呪いを解くことはできないようだ。姫たちの呪いを解くにはやはり術者であるドルマゲスを倒すしかあるまい。 魔術師の助言に従い、魔法の鏡に海龍の魔力を宿らせた一行は、再び北の遺跡にやってきた。 北の遺跡は闇の遺跡とも呼ばれており、鏡の力で内部を照らされても尚おどろおどろしい空気が流れている。いくつものの悪魔像が並べられたこの場所は、まるで邪神崇拝をしていたかのようだ。
「この先にドルマゲスの気配がするのは確かだが、あまり長居したくない場所だな。」
仲間のなかでも特に気に敏感なククールがそうこぼすの無理はない。 遺跡の中にある壁画にはレティスという白い鳥と7人の魔術師がラプゾーンという巨人に立ち向かう姿が絵が描かれており、人魂によれば銅像のその白い鳥を光線で燃やさなければ最奥の祭壇へ行けないのだという。人魂はレティスが憎い憎いと言っているが、絵画を見る限りラプゾーンの方が悪者のように思える。だがそうしなければ先に進めないのならば人魂の言う通りにするしかない。 そうしてたどり着いた最奥には、水球に漂うドルマゲスの姿があった。
ずっとドルマゲスを追って旅をしてきたエイトとハイネであるが、実のところこうして直接戦うのは初めてである。改めて突きつけられた魔力は強大なものだった。流石なの知れた魔術師を何人も屠っただけはあり、5人がかりでもなかなか決定打を与えられない。
「未来永劫茨の中で悶え苦しむがいい!」
ドルマゲスの杖から大量の茨が放たれる。ハイネが前にでてエイト達を守ろうとするが、とても盾だけで庇いきれるものではなく周囲ごと茨に飲み込まれる。 絶体絶命、そのはずだったのに。
「ハイネ、何かしたの…?」 「私は何もしてないわ!」
茨が突如朽ちて後形もなく消えたのだ。ゼシカがハイネに尋ねるが、彼女自身に思い当たる節はない。むしろ茨はエイトを中心に枯れていったように感じた。 これには流石のドルマゲスも驚いたようで、気に入らないとこちらを睨みつける。
「面倒だが全力を出さなければならないようですね……!」
ドルマゲスの姿の闇に包まれ、みるみると姿が変わっていく。
『この虫けらどもめ!二度とうろちょろ出来ぬようバラバラに切り裂いてれるわ!』
群青と深紅の翼を広げた悪魔がそこにいた。
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