Patriot 閑話
エイトとハイネにとってミーティアが大切な幼馴染であるように、ミーティアにとっても二人は無くしてはならぬ存在だった。自ら姉のように振る舞うハイネはもちろん、エイトのことも兄のように思ったことがある。それを口にしたことはないけれど。 それだけ近い存在だからこそミーティアは気が付いたのだ。エイトがハイネに向ける感情が姉弟愛にとどまるものではないことを。そうでなければ新人兵とにこやかに話すハイネをじっと見つめるものか。もっとも本人にその自覚はなかったようだが。 対しハイネはというと正直ミーティアにもよくわからない。少々エイトに過保護であるが、それはミーティアに対しても同じこと。それに二人に対してほどでなくとも彼女は新入りにはいつも気を配っている。そういう性分だと言えばそれで済みそうでもある。 だからこそハイネと夢で繋がったとき、ミーティアは思い切ってきいてみたのだ。
「ハイネに好きな人はいますか?」 「そうですね、姫のことは大好きですよ。」 「ミーティアが聞きたいのはそういうことではありません。」
はぐらかすハイネにミーティアは頬を膨らませる。その中性的な容姿と柔らかな笑顔に流される女性も少なくないが、ミーティアは見慣れているので今更惑わされない。
「ふふ、そうですよね。姫もお年頃ですもの。」
コロコロと笑うハイネにミーティアは子ども扱いされている気がしてならない。ハイネはミーティアとエイトに対しお姉さんぶるが、年は一つしか変わらないのだ。
「しかし私は弟と妹分が結婚するまで良い人を作るつもりはありませんよ。そういう意味では姫とエイトが結婚してくれると早いのですが。」 「な、エイトは幼馴染ですよ!?」 「あら、だからこそですよ。勝手知ったる仲なら今更遠慮するものもないでしょう。それにあの婚約者よりエイトの方が優良物件だと思いますが。」
私が保証するというハイネにミーティアはぐうの音もでない。婚約しているとはいえ彼女としてもあんな駄目男に自分の人生と国を預けられない。このまま結婚してしまうぐらいなら馬のままでいたほうが幸せだと思っている自分もいる。
「ハイネはエイトをなんだと思っているんですか。」 「もちろん可愛い弟で、幸せになってもらわないと困ります。」 「ハイネのそれは姉弟愛というより、いっそ母性愛だと思います……。」
分かってはいたがこれは前途多難そうだとミーティアは肩を落とした。
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