Patriot 33
儀式の内容はアルゴリザードを倒し、赤い宝玉を持ち帰るというものだ。このアルゴンハートが大きければ大きいほど、王としての資質が高いと認められる。 しかしその道中もチャゴスはすぐに疲れただの、馬車が狭いだの、わがまま放題だった。正体を知らないとはいえ王や姫に乱暴を働いたときはハイネから殺気がもれた。ヨシュアが拳骨でも使って彼を止めなければ血をみるはめになっていたかもしれない。パルミドの激怒再来で国際問題がおきるのは勘弁だ。
「まるでお母さんと手間のかかる子供のようね。」
その姿にポルクとマルクをしかりつけるお婆さんを彷彿させたのだろう。ゼシカがハイネにこっそり耳打ちする。その評価はもっともだ。 いざアルゴリザードを前にすればチャゴスはヨシュアの後ろに隠れたり、時には剣を投げ捨てて逃げ出したりする始末。そんな王子をひっ捕まえながらも的確に弓矢で急所を狙うヨシュアは、さすが国王に信を置かれた兵士というべきか。
「本当はヨシュアが王子だったりしないの?」 「残念ながら。」
ゼシカの言う通りであればまだ良かったが、現実はいつだって非情だ。
何匹目かのアルゴリザードを倒し、ようやく王子のお眼鏡に合うアルゴンハート手に入れ、一行がサザンビークに戻ると町はお祭り騒ぎになっていた。どうやら年に一度のバザーが始まったらしいく、各国から集まった商人が思い思いの物を売っている。
「ヨシュア、ぼくはバザーを見学する!ここからは別行動だ!」 「王子、王への報告がまだですよ!」 「そんなのは後でいい!」
その賑わいを見るやいなや、チャゴスは人混みに颯爽と紛れ込んでいく。ヨシュアの注意などまったく聞く気はないようで、その後ろ姿にヨシュアは本日何度目か分からないため息をつく。
「まったく仕方ありませんね……。今日はこちら持ちで宿の手配をしておきますので、皆さんもせっかくのバザーを見て回ってください。王子と合流出来次第、城へ報告しに行きましょう。アルゴンハートはまだ皆さんが持っていますから、王子も先に城へ戻ることはできませんしね。」
バザーの開催中は部屋が埋まりやすいのだとヨシュアは宿の予約を取りにむかった。まさかこの隙にチャゴスが取り返しがつかないことをすると思いもせずに。
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