Patriot 25
宝箱を守っていた魔物を倒し、無事ビーナスの涙を手に入れた一行だが、ハイネの予感は的中することとなる。
「この石ころは返すが、あの馬を手放す気はやっぱりないよ。」 「なっ!?話が違うじゃねえか!」 「あくまで私は"考える"って言ったんだ。」
だから今考えたとのたまうゲルダにヤンガスが屁理屈いうなと返す。それにゲルダはむっとした顔をした。
「約束ね……。そもそもこれはあんたが以前私にくれるって約束したもんだろ。」 「うっ!今、そんな大昔の話を!」 「自分だって約束破っといてよく言うよ。」
何も言えなくなるヤンガスをゲルダは睨みつける。 エイト達もかつてヤンガスが剣士像の洞窟に挑戦し失敗したことを聞いていた。そしてそれにゲルダが絡んでいることも察している。 ヤンガスもその時のことを後悔しており、今更ゲルダに見せる顔がないと思っていたのだ。それでも自分の過去と向き合わなければいけない日がやってくる。
「……お前の言う通り、あの時俺が約束破ったのは悪かった。お前が怒るのは無理はねえ。」
だがこれはヤンガスだけの問題ではない。ヤンガスの頭が地につけられた。
「この通りだ!オレのことはどうしてもいいから、あの馬を返してくれ!」 「なっ!大の男がそう簡単に頭を下げるんじゃないよ!」
これにはゲルダも驚いたようで、先ほどの態度と打って変わってヤンガスに近寄る。
「……わかったよ。あの馬はあんたらの好きにすればいい。」 「本当にいいのか?」 「あんな馬いらないよ。さっきのだってあんたを困らせようと思って言った言葉だしね。」
だが興も冷めたと、ビーナスの涙と引き換えに馬を返すとゲルダは今度こそ約束した。
何とかミーティアを取り戻せたエイト達は、そろそろ情報屋も戻っているだろうと再びパルミドに戻ることとなった。王やハイネにとって二度と寄りたくない町だが、当初の目標であるドルマゲスの情報を得るためならば致し方あるまい。
「ゲルダ様、本当によかったんですか?」
そんな彼らを見送って下っ端がそう尋ねれば、ゲルダは何度も言わせるんじゃないと手を払うようにふる。
「あそこまで上等な馬、さすがに手に余る。それならさっさと手放した方がいいってもんさ。」 「そんなことは、」 「あれがただの馬じゃないってこと、分からないのかい?」
反論しようとする下っ端をゲルダは間髪入れず黙らせる。もともと馬は賢い生き物だが、あの白馬はそれを差し引いても聞き分けが良すぎる。ヤンガス達の必死さといい、何か訳ありなのだと容易に察せられた。
「それにあれ以上渋ってみろ。あの女戦士に何されるかわかったもんじゃない。」
触らぬ神に祟りなしだとゲルダは揺り椅子に放置した本を再び開いた。
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