Patriot 24
パルミドの外れに住むゲルダはハイネやゼシカとはまた違う強い女性であった。
「ゲルダ、お前さんが闇商人で手に入れた馬を譲ってくれないかい。あれは、もともとオレの仲間の持ち物だったのが盗まれたんだ。金ならいくらでも積んでやる。正直きついが、何とかしてやる。」 「あんたの率直なところは嫌いじゃないよ。だけどこれとそれとは話が別だ。あたしは本当に良い物は手放すつもりはないんでね。」
ヤンガスの交渉をゲルダはばっさりと切り捨てる。金に揺らがぬその姿勢は女性ながら格好よく、彼女の弟分が強く慕うのも分かるものがある。だが譲れぬのはヤンガス側も同じだ。
「どうしても駄目か?仲間のためなんだ。オレにできることだったら何でもするぜ。」 「……へえ、驚いた。アンタからそんな言葉を聞けるなんてね。よっぽど大事なお仲間なようだ。」
どこか皮肉っぽい言葉を吐いて、ゲルダは先ほど横たわっていた揺り椅子から達が立ち上がる。
「ここから北にある洞窟にあるビーナスの涙っていう宝石を取ってきな。そうしたら馬のことも考えてやるよ。」
一行は剣士像の洞窟へ向かうこととなった。
洞窟と言われているが、人工的に作られた地下空間は石造りであった。入ってすぐに大きな宝箱が見えるが、無理に行こうとすればトラップが発動するらしい。その証拠に無数の矢が刺さった死体がいくつも転がっている。
「少し意外だったわ。ハイネがヤンガスとゲルダの話に口を出さなかったの。」
罠に注意しながら進むハイネにゼシカはそうこぼす。昨日のような荒々しさは鳴りを潜めているとはいえ、じっと様子を見ていたのはいっそ不気味でもあった。
「ヤンガスが自分に任せてほしいと言ったもの。それなのに私が邪魔するわけにはいかないでしょう。」
確かにハイネもゲルダとの約束には引っかかるものがある。彼女はビーナスの涙をもってきたら"考えてやる"といっただけで、姫を返すとは明言していないのだ。ハイネがそのことを聞き逃さなかったのを、おそらく彼女も勘づいているだろう。そのうえでハイネは口出ししなかった。
「それにみっともない姿、何度も見せられないわ。」
小さく笑いながらハイネはゼシカの頭を軽く撫でた。
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