Patriot 09

 東の塔はリーザス村の住人しか入れない造りになっており、ゼシカが脱走したことを知ったポルクに案内してもらうことになった。騒ぎにならないようマルクには見張りを続けてもらっている。
 村の人にしか開けられない扉とはいったいどんな魔術がかかっているのかと思いきや、仕掛けは案外単純なものだった。開き戸はダミーでシャッター式だったのである。

「ゼシカ姉ちゃんのためだからお前たちに教えたけど、本当は村の人以外に教えたら駄目なことなんだからな。おいらは先に村に帰るけど絶対ゼシカ姉ちゃんを無事に連れて帰ってくれよ。」
「ええ、もちろん。貴方も怪我しないようにね。」

 余計なお世話だと言いながらも、ポルクはハイネから聖水を受け取りリーザス村に戻っていった。




 リーザス村の人でも年に一度の聖なる日しか訪れない塔の内部は魔物が巣くっており、いたるところに蔦が張っていた。入口に限らず仕掛けがいくつもあるようで、それら一つ一つに注意しながら上へ上へと昇っていく。やっとたどり着いた頂上は手入れの行き届いた庭園だった。赤い瞳の女性の像が不思議な存在感を放っており、おそらくあれがリーザス像なのだろう。夫人からきいたとおり瞳の宝石が採られたような形跡もない。
 ただここにもエイト達以外の人影はなく、すれ違ったのだろうかと3人が話しているときだった。

「あんた達……、兄さんを殺した盗賊ね!絶対宝石を狙ってもう一度やってくると思っていたわ!」

 後からやってきたツインテールの少女がこちらを睨みつけながらそう言い放ったのだ。おそらく彼女がゼシカだろう。

「な!?あっしらは別に盗みにきたわけじゃ」
「ならなんで村の人間でもないあんた達がここにいるのよ!?」

 ヤンガスの言葉を遮って放った彼女の火炎魔法の軌道をハイネが盾を使ってずらす。

「へえ、盗賊にしてはなかなかやるじゃない。でも女に守られるなんて随分情けないのね。」
「っ!僕たちはただ君に会いに来ただけだ!」
「へえ、つまり私のことも殺すつもり?でも兄さんと同じ目にあうのはあんた達のほうよ!」

 彼女の嫌味に一瞬苦い顔をしたエイトは戦う意思はないと訴えるが、頭に血が上った彼女は聞く耳を持たない。それどころか魔力を練って先ほどより大きな火炎球を作り出している。そこそこの広さがある庭園だとは言え、天井のあるここであんなものを放てば彼女自身にも危険が及ぶ可能性がある。

『待て!ゼシカ、彼らは私を殺した犯人じゃない。』

 庭園に姿の見えない青年の声が響いた。

赤い瞳の石像
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