Patriot 10

 声はリーザス像の瞳からしていた。死したサーベルトの魂の欠片がその宝石に宿っていたのである。しかし欠片に過ぎない魂は長くはない。残された力で彼らはゼシカとエイト達に自身の記憶を見せた。
 雷鳴とどろく雨の日、塔の扉が開いていたことに不審に思ったサーベルトは1人塔を上ったのだという。一見何の異変もなかったこの場所にその男は突如現れたのだ。およそ人と呼べぬ容姿のその男はドルマゲスと名乗った。彼は人生の儚さを考えていたのだと語り、サーベルトに近寄った。明らかな異様な不審な男にサーベルトは剣を抜こうとしたものの、なぜか剣は鞘から抜けない。それどこから身動きが一切取れなくなったサーベルトはそのまま杖で体を貫かれてしまったのだ。男は不気味な高笑いを残して塔から姿を消した。

『それが私が語れる真実だ。ゼシカ、これで私の魂の欠片も役目終えた。これで…、お別れだ……。』
「いやよ!兄さん、いかないでよ!私、これからどうしたらいいか分からない!」

 ゼシカがリーザス像にすがりつくが、サーベルトの声はどんどん弱くなっていく。彼の言う通り、もう限界なのだ。

『ゼシカ……、お前は信じた道を進めばいい……。さよならだ。』

 その言葉を最後にサーベルトの気配は光と共に消えた。

「これ、使って。」

 泣き崩れたゼシカにハイネはそっとハンカチを差し出す。

「ありがとう、それと誤解しちゃってごめん……。」
「気にしないで。それより目が腫れたら大変だもの。」
「ううん、今度ゆっくりあやまるから。そのときこのハンカチも返すから、もうしばらく一人でここにいさせて……。」

 ハイネは静かに頷いて、何も言わず彼女に背を向けた。





 一足先にリーザス村に戻ることにした一行だが、その前に一度王と姫も交えて話の整理を行うことにした。

「そうか、サーベルトもドルマゲスめに……。」

 悔しそうなトロデ王の隣で姫が悲し気に鳴く。ジョセフ、ライラス、サーベルト。明確な殺害だけでもう3人だ。

「記憶を見た限り、ドルマゲスの目的は最初からサーベルトさんの殺害だったと思います。」
「兄貴の言う通りでやんす。」
「宝石には目もくれてなかったものね。」

 エイトの推測にヤンガスとハイネも頷く。
 ジョセフの時は呪われてもなお抵抗したからだが、サーベルトの場合彼は最初から殺しにかかっていたのだ。東の塔に侵入したのもサーベルト一人を誘いこみ、確実に仕留めるためだろう。
 しかし何故?ライラスは彼の元師匠であり何らかの私怨があったかもしれないが、アローザから聞いた話ではサーベルトとは何の接点もない。奪った杖を誇示したいだけならピンポイントすぎるし、集落を一つつぶすなどもっと派手なことをしそうだ。

「奴の目的はわからん。だがこのまま放っておけば更なる被害者がでるだけじゃろう。」

 王の言う通りなんとしてでもドルマゲスに追い付かねばならないのは確かであった。

犠牲者と怨敵
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